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とかち・宇宙フェア「インターステラテクノロジズ社員が語るロケット開発の現場」レポート

イベント内容

2020年9月24日から30日まで、帯広市にある藤丸百貨店にて、十勝から宇宙を目指すベンチャー企業や宇宙のまちづくりを進めている大樹町の取り組みを紹介する「とかち・宇宙フェア」が実施されました。なかでも、26日(土)と27日(日)のそれぞれ午前と午後にミニセミナー「インターステラテクノロジズ社員が語るロケット開発の現場」では、各回で定員を超えるほどの盛況を見せました。今回は、27日のミニセミナーの様子をご紹介いたします!

インターステラテクノロジズ株式会社(以下、IST)は、国内の民間ロケットとして初めて宇宙に到達した、ロケットの開発・製造・打上げを実施している北海道大樹町の会社です。ISTの前身は、民間で宇宙を目指す団体「なつのロケット団」。東京で発足し、千葉県、北海道赤平町と拠点を移し、現在の大樹町で会社化されました。その「なつのロケット団」からずっとロケット開発に携わり、現在はIST広報を務める小林伸光さんが登壇されました。

小林さんは、エンジニアではなくCGデザイナー。にも関わらず、IST会社設立当初はロケット開発のプロマネも務めたそうです。「上が頼りないと、下がしっかりするんですよね」と、会場を沸かせていました。

ISTは、自分たちでロケットを作り、宇宙空間への輸送を行う会社。現在は、観測ロケット『MOMO』という、高度100kmの宇宙空間を経て海に着水する弾道飛行を行うロケットを打上げています。ロケットを作るには、とても長い時間とお金をかけて作るイメージがありませんか?実はISTは、「世界一便利で低価格なロケットを作る」というプロダクトコンセプトを掲げ、それを実現するために必要な部品等を自分たちで作ったり、市販されているものも利用しているそうです。部品を作るために必要な工作機械も、特に珍しいものはなく、「元々農協のスーパーだった建物を借りて、工場にしています。本当に何の変哲もない町工場です」。それでも、民間でロケットを開発・製造するために試行錯誤を重ねてきた跡が見受けられます。

観測ロケットMOMOの模型

「ISTがロケットの開発を作っていけるのは、大樹町や、地元の人からの応援があってこそ」だと小林さん。実は大樹町は30年以上前から「宇宙のまちづくり」を提唱していました。大樹町で作られたロケットが宇宙に到達した様子を見て、本当に宇宙の町になるんだと地元の方々が実感し、そこからより一層応援してくださっているそうです。後援会が作られたり、打上げ当日の差し入れなど、様々な形での応援がISTの背中押してくれています。

離昇後すぐに推力を失い地上に落下、そのまま炎上した機体の尾翼。

実際のロケット開発は、山あり谷あり。2018年に『MOMO2号機』が、離昇後すぐに推力を失い地上に落下し炎上しました。

「自分たちが万全を尽くしてやって、それでロケットが宇宙空間に到達しなかった。落ち込むのではないかと思っていたのですが、目をギラギラさせるのがエンジニア。落ち込んでる暇もなく、『あれはどういうことだ!?こうだったんじゃないか?』と、打上げ直後から開発に没頭していったんです。宇宙空間に到達しなかったことに落ち込む必要はなく、ロケットが量産フェーズになってトラブルが起こるよりも、早いうちに起こることに越したことはないんです。このトラブルはMOMOを打上げないと分からなかったことですし、自分たちが未知の領域に挑戦する面白さでもあります」

2019年には『宇宙品質にシフト MOMO3号機』が宇宙空間に到達し、その偉業は「国内民間単独開発で宇宙に行ったのは国内初」「液体ロケットでの宇宙到達は世界で4番目」「北海道は、国内で宇宙に行った都道府県としては3番目」となりました。

その後、『ペイターズドリーム MOMO4号機』と『えんとつ町のプペル MOMO5号機』は宇宙空間に到達ならず、新たなトラブルが出てしまいました。「3号機の成功は薄氷を踏むようなもの」と小林さんは語ります。

司会の北風さん。

「失敗するとしょんぼりするのだと思っていました。」と司会の北風さん。

小林さんは、「新しいことを取り入れたら絶対に何かありますし、技術的な新しいトラブルは早く発見するに越したことはないですね。いままで打上げの中で、同じトラブルは1回も無いんです。つまり、どんどん進化しているということ。それに、何をどうしたら良いのか考えるのが好きなのがエンジニアです(笑)」

北風さんの中で印象的だったのは、MOMO2号機の落下後炎上した後のISTの対応だったそうです。ISTは、MOMO2号機も含め、宇宙空間に到達しなかった打上げ動画を隠すことなく、全て積極的に公開しています。航空宇宙業界の中には成功した動画しか出さない会社もありますが、ISTは「みんなのロケット」というスタンスで、より多くの会社や人の協力を得ながら開発しているので動画を公開したそうです。また、動画だけではなく、打上げデータは全て公開しており、国主導ではできない、ベンチャー企業ならではの開発スタイルをとっています。

小林さんのお話は、ロケットへの情熱を感じます。

「今後のISTの目標は、足元では、観測ロケットMOMOを確実に打上げられる機体にします。現在は改良を行っているところです。また、観測ロケットMOMOの他に、小型衛星を打ち上げるためのZEROというロケットの開発も並行して行っています。これは、宇宙空間に行って帰ってくる弾道飛行のMOMOとは違い、高度500kmの地球周回軌道に超小型人工衛星を運ぶためのものです。室蘭工業大学やJAXAなどのいろんな会社の協力を得て、開発しています。そしてその先に、大樹町を世界のロケットの打上げ場の基地にするという「スペースポート計画」構想があります。ISTとしても貢献していきたいと考えています。」

会場では、これまで開発してきた部品や、過去のロケットの一部などが展示されており、ISTのセミナーを聞くために子どもからお年寄りまで多くの方が集まりました。十勝管内だけでなく、北海道中の期待が寄せられていることがひしひしと伝わるセミナーでした。

インターステラテクノロジズ株式会社
ホームページ: http://www.istellartech.com/
Twitter: https://twitter.com/natsuroke
YouTube: https://www.youtube.com/channel/UCxqoT-HSpNZeIZaT5dgHXaQ