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【NoMapsレポート】NoMaps Agritech Summit – 農業×テクノロジーの可能性 –

【NoMapsレポート】NoMaps Agritech Summit – 農業×テクノロジーの可能性 –

北海道・札幌を舞台に、カンファレンス・展示・イベント・交流・実証実験などを展開し、クリエイティブな発想や技術で、次の社会・未来を創るためのコンベンション『NoMaps』。過去、STARTUP CITY SAPPOROでも取材させていただきました!2020年はそのNoMapsとSTARTUP CITY SAPPORO事務局が連携し、8つのオンラインカンファレンスを実施。今回は、NoMaps2日目、10月15日(木)16:00〜16:50で行われた『NoMaps Agritech Summit – 農業×テクノロジーの可能性 -』のトークセッションレポートをお届けいたします!

登壇者プロフィール

濱田 安之
株式会社農業情報設計社
代表取締役CEOファウンダー
https://agri-info-design.com/

佐々木 伸一
株式会社ルートレック・ネットワークス
代表取締役社長
https://www.routrek.co.jp/

坪井 俊輔 
Sagri株式会社
代表取締役CEO
https://sagri.tokyo/

岡田 昌宏
合同会社更別プリディクション
代表社員
http://saradiction.com/

モデレーター

佐々木 哲平
A-FIVE(株式会社 農林漁業成長産業化支援機構)
ディレクター
http://www.a-five-j.co.jp/


A-FIVE 佐々木氏
日本の農業者の数は、とてつもない勢いで減少しています。農業者の平均年齢は68歳。そんな年齢構成ですから、15年前と比べると半分以下の人数に減っており、あと10年後にはさらに半減してもおかしくないというような状況です。
そして、農業者の減少とともに1農家あたりの農地面積がすごい勢いで広がっていて、10年間で平均して1.5倍ぐらい広がったことになります。農地を新たに担える方というのは、合同会社更別プリディクションの岡田さんのような、すごく活発な方に集中していきますので、地域の担い手にすごい勢いで土地が集まってきているというのが現状だと思います。
農地は拡大していく一方で、ベテラン農家はどんどん減っていきます。すると、生産性を何倍にも高めないとやっていけなくなります。まさにこれがアグリテック、「あったらいいな」ではなくて、もはや「なければならないもの」になりつつあると言えるでしょう。
アグリテックという言葉が出てきてますけど、農業情報設計者の濱田さんやルートレックの佐々木さんがやっているようなAIやIoTを使ったいわゆるスマート農業、サグリの坪井さんがやっているような農業データ基盤となるプラットフォームも今回はアグリテックに含めて議論をしたいと思います。
嬉しいことに、今注目されている担い手の方々や、異業種から新規就農されている方は、経営感覚に優れていたり新しい技術を受け入れ使いこなしている方が多い印象を受けています。こういったところが、まさに今アグリテックが注目されている要因だと思っています。

A-FIVE 佐々木氏
岡田さんにお話を伺います。こうしたアグリテックの実証実験を幅広くされていますよね。岡田さんから見て日本におけるアグリテックの普及の度合いをどう感じていますか?農家を代表する立場から教えていただきたいです。

合同会社更別プリディクション 岡田氏
私が今いろんな取り組みをしている中で一番思うのが、アグリテックは今まさに黎明期という状況で、様々な技術をどんどん新しくしていかなきゃいけない時期だと思います。
しかし、アグリテックベンチャーは地に足がつかない状況で「あれもできる、これもできる」という主張をしているメーカーを非常に多く見かけます。それでは普及しないと思うんです。どの技術をどうやって統合させて、どういうビジョンを作るのかっていうのが、世界的に見てもすごく中途半端で、本当に作りたい未来は何なのかといった大きな絵を描けていないというのが私の中で一番現状の課題だと思ってます。

A-FIVE 佐々木氏
ありがとうございます。
次に農業情報設計者の濱田さんにお話をお聞きします。濱田さんは岡田さんとも実証実験をされていますよね。下町ロケットでロケットトラクターが取り上げられたこともあり世間から注目されていますし、農業情報設計者がはまさにロボットトラクターシステムをリリースされました。普及に向けてどういう課題がありますか?

株式会社農業情報設計社 濱田氏
農業用の全自動の技術等々を含め、オートトラクターと一般に言いますが、研究自体は40年前くらいからされていて、40年間ずっと積み上げられてきた技術なんです。それがようやく、この5年間ぐらいで世の中に出始めてきています。
当時からずっと二つ課題があるって言われていて、一つは安全性、それからもう一つはコストです。徐々に前進しつつありますが、安全性とコストがクリアできて初めて本当に使ってもらえるものになるかなと思っています。

A-FIVE 佐々木氏
ありがとうございます。今まさに普及させていくとなると、ルートレック・ネットワークス(以下、ルートレック)の佐々木さんのところとかなり近いステージでしょうか。ルートレックのゼロアグリは自動の水やりシステムですね。水の量だけではなく、土にとって適したの栄養分の量調整までできるようになりましたが、今後どういった展開を考えているか、教えてください。

株式会社ルートレック・ネットワークス 佐々木氏
日本では現在250セット近く使ってもらっているのですが、ここまでくるのに5年程かかっています。やはり農業は非常に保守的であり、かつデジタル化が進んでいないですよね。ですので、我々がこれから普及にあたって必要だなと思っているのは、地域に根ざしたビジネスパートナーだと考えてます。特に将来的に考えなきゃいけないのは、行政とJAと足並みを揃えていくことですね。農業のデジタル化は本当に黎明期。だからこそ、農業のデジタル化を進めることによって農業の持つ課題を解決していき、日本だけではなくアジア全般にも進出していけるような土壌を、どんどん作っていきたいなと考えております。

A-FIVE 佐々木氏
はい、ありがとうございます。
では次にSagriの坪井さんご質問です。茨城県つくば市や静岡県裾野市で耕作放棄地の見える化のサービスを展開されてますが、両市とも研究開発にとても熱心な町ですよね。一方で昨年にはインドで法人を設立したり、タイへ進出されています。日本と他の国で、アグリテックの普及度合やそのデータ活用に違いを感じることはありますか?

Sagri株式会社 坪井氏
タイは行政が6割ほど農地を管轄しているのでスマート農業が進みつつあるような市場になってきていると感じます。一方でインドは州政府単位統治しているのですが、州政府が農家を放置しているケースが多いです。なので、JAのような組織と組んでやらなければいけないというのが実態ですね。
日本に関しては、なかなか横連携ができてないですよね。ビジョンが描けずアジャイル的な動きになってしまっているように感じます。あとやっぱり行政、特に省庁はデジタルではなく紙が多いので、そこに時間を割かれ過ぎていて、本質的な話し合いに時間を使えていないのではないかと感じます。農家の書類作成も電子化できればより改善されると思いますし、他のアグリやグローバルフードバリューチェーンシステムなどと横の繋がりができれば、かなりいいものになるはずですよね。

株式会社ルートレック・ネットワークス 佐々木氏
デジタル省庁ができるので僕はすごく期待してるんですが、多分このデジタル化の議論というのは解決するにかなり努力が要ると思ってます。そこは自治体とJAが旗振り役となって、民間がそこに乗っかっていくことが非常に重要だと思ってるんですが、これ皆さんどう思われますか?

株式会社農業情報設計社 濱田氏
実は2年間ほど農林水産省の本省にいたことがあるのですが、つくづく思ったのは、行政など期待したら駄目なんだなと。自分たちで生き残るためにビジネスをしなければいけないし、あるいは、自分たちで世界に出てかなくちゃいけないなと思ってます。だから僕らもアプリは最初は英語版しか作りませんでしたし、もちろん苦しいんですけどそういう意味では、民間が先なのかなとは、僕は思ってます。

Sagri株式会社 坪井氏
同意見です。しかしそうは言っても僕は国力の心配はしてます。だから何とか国が頑張って欲しいです。

合同会社更別プリディクション 岡田氏
私は反対意見です。農家や農協職員は今かなり淘汰されて始めている状況なんですね。そもそも年齢的にあと5年10年でリタイアする世代がほとんどです。逆にこの5年でずいぶん増えてきたなっていうのが新規就農者、もしくは大規模農業者。こうなってくると、一気に話は変わってくるだろうという印象を受けています。特に規模が拡大してる農家のほとんどは、周りの農家から「自分の農地を使ってくれ」と頼まれている背景があります。
なので、そうやって地域の主力になっている生産者をしっかりと押さえて、課題を把握する。その課題がこれから全国で起こり得る課題にも繋がっていくはずなので、その課題にアジャストしたシステムで、ちゃんとしたビジョンを農家に伝えてやっと様々なものが生まれてくるだろうなと思っています。

株式会社農業情報設計社 濱田氏
とはいっても、5年は非常に長くて、スタートアップは基本的に1〜2年駄目だと死んでしまいます。そこら辺を短期的にも生き残ることを考えつつですね。

Sagri株式会社 坪井氏
私自身の失敗談をお話させて欲しいのですが、元々農家に寄り添ってアプリケーションを作っていたんですけれども、10年経ってこれが赤字から黒転するのかが見えなくて、結局ピボットしたことがあります。

合同会社更別プリディクション 岡田氏
農家に寄り添っちゃダメでです。そうじゃなくて、ビジョンを見せないと農家ついてきません。それはもう、どんな事業でもそうだと思います。

株式会社農業情報設計社 濱田氏
僕も研究者を辞める前に、数えると2000台売れないと黒字にならない計算になったんです。なので最初から日本ではなく海外から攻めていきました。海外から収益を上げて国内に還元するっていう図式もやっぱすごく大きいと思うんですよね。そういうところまでいけたらいいなと思います。

A-FIVE 佐々木氏
岡田さんの話でもありましたが、アグリテックまだまだ黎明期であり、普及は本当にこれからの段階なんだろうなと思います。その中でも、皆さんがご指摘のように、自社だけではなく同業他社や行政、農協、代理店の方々の協力も必要なのかと思います。そして濱田さんの最後のコメントでもありましたが、アグリテックはローカルな課題を解決するものであると同時にグローバル展開も狙える領域なのかなと感じました。