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【NoMapsレポート】地方発スタートアップの課題と可能性

【NoMapsレポート】地方発スタートアップの課題と可能性

北海道・札幌を舞台に、カンファレンス・展示・イベント・交流・実証実験などを展開し、クリエイティブな発想や技術で、次の社会・未来を創るためのコンベンション『NoMaps』。過去、STARTUP CITY SAPPOROでも取材させていただきました!2020年はそのNoMapsとSTARTUP CITY SAPPORO事務局が連携し、8つのオンラインカンファレンスを実施いたしました。

今回は、NoMaps2日目、10月15日(木)14:00〜14:00で行われた『地方発スタートアップの課題と可能性』のトークセッションレポートをお届けいたします!


登壇者プロフィール

板倉 一智
株式会社ウーオ 代表取締役
鳥取県出身。親族や幼馴染が漁業従者という環境で過ごす、大学卒業後大手物流会社へ就職。帰省するたび地元水産業の衰退を目の当たりにし水産業再生を強く想い起業にいたる。流通構造に着目し産地から消費地市場までの水産業の上流で事業展開を行う。
https://uuuo.co.jp/

木村 亮介
ライフタイムベンチャーズ 代表パートナー
一橋大学商学部経営学科を卒業後、プライスウォーターハウスクーパース株式会社(現:PwCアドバイザリー合同会社)及びKPMGヘルスケアジャパン株式会社にて公共インフラ/ヘルスケア領域に関するコンサルティング業務に従事した後、インキュベイトファンドへ参画し40社超の投資先支援に従事。
2017年1月にライフタイムベンチャーズを設立。プレシード/シードステージに特化したインキュベーション投資を行っており、株式会社ウーオにも投資している。
https://lifetime-ventures.com/

モデレーター

大久保 徳彦
株式会社POLAR SHORTCUT 代表取締役CEO
1985年北海道帯広市生まれ。慶應義塾大学法学部卒。
ソフトバンクモバイル株式会社(現ソフトバンク株式会社)にて、プロジェクトリーダーとして多くの新商品企画や新規事業推進プロジェクトに従事。その後、動画制作のスタートアップ企業 Crevo株式会社にて、経営企画・人事・財務・新規事業開発領域を組織のNo.2として統括。伊藤忠テクノロジーベンチャーズ等から3.4億円の資金調達を実行。北海道の成長産業支援をテーマに2020年4月に株式会社POLAR SHORTCUTを設立。
https://corp.polarshortcut.jp/

株式会社POLAR SHORTCUT 大久保氏
板倉さんは東京で働いていたのだと思いますが、なぜ広島で起業しようと思ったのですか?

株式会社ウーオ 板倉氏
結婚を機に妻の実家である広島に帰りました。地方であったとしても何が出来て何が出来ないのかを噛み砕いて考えた時、広島でも起業が出来ると思ったので広島を選びました。地方は地方で良いところもありまして、もちろん首都圏に集まる情報や人と比べると足りない部分はあるのですが、地方ならでは・地方だからできるということがたくさんあると思いました。

株式会社POLAR SHORTCUT 大久保氏
東京でやらないことがハンデになることはありますか?

株式会社ウーオ 板倉氏
何をハンデと捉えるかですが、そのハンデを解消できるだけの仕組み、解決策を持っていれば問題ないと思っています。私の場合は、自分の中で解を見つけていたのでそこは問題ではありませんでした。

株式会社POLAR SHORTCUT 大久保氏
木村さんとの出会いと、投資決定までの経緯を教えてください。

ライフタイムベンチャーズ 木村氏
2017年に、KDDIのアクセラレータープログラム『無限ラボ』の、地方ビジコンの優勝枠がピッチする場がありました。たまたまそこに行ったら板倉さんと出会ったんです。
ピッチを聞いて応援したいと思い、大きな資本が必要になると思ったので、投資の意思決定は出会いから1ヶ月以内には決まっていました。しかし、自分が最初に投資することがウーオにとって良いことなのかと悩みましたね。

株式会社POLAR SHORTCUT 大久保氏
投資を受けたことで、会社がどう変わったのか教えてください。

株式会社ウーオ 板倉氏
ずっと1人でやっていたので、事業づくり、チーム作りも完成していない状態でした。木村さんに出資してもらい、例えばアポに同席してもらったり、業界の課題解決を一緒に考えてくれたりなど、経営者の一名として伴走してもらったんです。事業への解像度がかなり高まりましたね。

株式会社POLAR SHORTCUT 大久保氏
投資家の目線から見て、地方への投資に対してどう考えていますか?投資先が東京であれば物理的に距離が近いのでハンズオンで一緒にやっていけると思いますが…。

ライフタイムベンチャーズ 木村氏
出会う部分と、投資した後に分けてお話します。
起業家と投資家が出会う部分に関しては、かなり課題があると思います。地方の起業家としては、どこに相談して良いのか、こんなフェーズで相談して良いのか、どこまでVCに本音で相談して良いのか…お互いが交渉関係にあるので、この悩みが地方だとより強くなります。地方の起業家が東京の人より優秀じゃない、なんてことは全くありません。ですが、そもそも地方の起業家と出会うきっかけがなかったり、気軽に相談できない空気感がお互いに残ってしまっているので、そこは課題だと思っています。
私の場合、シードステージを中心に投資しているのですが、シードステージの場合、東京都内にオフィスを構えたり、メンバー採用の競合がサイバーエージェントやメルカリになってしまうような状況を見て、「東京でやるのが果たしてベストなのか」と思うこともあります。地方だからこそ集中した事業づくりに取り組めることもある思っていますし、メンバーを採用する観点でも、地方だとその地域で一番情熱的な人が創業メンバーになっていたりもします。
投資後の支援面での難点としては、VCが銀行に借り入れの支援をするケースがあるのですが、銀行は管轄があるので、普段私が懇意にしている東京の担当者を紹介できないんです。初めましての方とのやり取りの中でファイナンスの支援をしなきゃいけないのは難しいところですね。
また、メンバーの採用も、例えば私は東京にいますが広島の人の採用だと、オンラインでしか参加出来ません。どうしても採用したい人を一緒に口説くなど、採用のサポートをしきれないという点はありますね。

株式会社POLAR SHORTCUT 大久保氏
人材採用のお話が出てきましたが、地方には、いわゆるリーダー・マネージャークラスの人材がおらず、なかなか社長一人の状態からスケールできないという課題を聞きます。東京だとメルカリなど大きな会社と競合しなきゃいけないと思うのですが、地方の方が採用の可能性があったりするんでしょうか?

ライフタイムベンチャーズ 木村氏
もちろん事業領域にもよりますが、あると思っています。地方に会社があって、東京の会社と同じようなビジネスモデルやプロダクトでやろうとすると大変かもしれないです。
ただ、ウーオのように地方じゃないと始まらないようなストーリーがある会社は、東京にあまりありません。東京でそういう事業に興味を持っている人や、UIJターンを考えているような、リーダークラスで働いてきたけれどこれから地方で働きたい方々への訴求ポイントになりますよね。自分の意思で会社を選んできてくれるので、そういう野心的で情熱的な人を採用できる可能性はあると思います。

株式会社POLAR SHORTCUT 大久保氏
板倉さんにお伺いします。初期に1人でスタートしたときに、周りに起業家が少ないような環境で、目線を高く上げ続け、モチベーションをどう維持していたのか教えてください。

株式会社ウーオ 板倉氏
広島でもスタートアップは少ないですし、気持ちを強く持ち続けるというのは確かに難しい部分はあるとは思います。でも、起業家にとって大事なのは「何をやりたいのか」だと思います。何をやるために何を続けなきゃいけないのか、やると決めたら走り続けるしかないので、仲間が周りにいないからとか、周囲の環境でモチベーション低下するのは甘いんじゃないかなと。気持ちを強く持ってほしいと伝えたいです。

ライフタイムベンチャーズ 木村氏
板倉さんはお子さんがいらっしゃるので、やらない理由はいくらでも探せると思うんですよ。でも板倉さんは起業後一度もブレないんですよね。

株式会社POLAR SHORTCUT 大久保氏
新しい経営陣が入ってから、組織はどう変わりましたか?

株式会社ウーオ 板倉氏
一人の時は、中途半端に進んでいたと思います。全てに手を入れなければならない状況で、バラついていたんですよね。それが、No.2が入ってきてくれて、自分が何に注力すれば良いか分かるようになりました。役割分担してコミットできていると思います。

株式会社POLAR SHORTCUT 大久保氏
地方のメリットと課題をお伺いしたいです。

ライフタイムベンチャーズ 木村氏
地方から会社を始めていく方が、オフィスの賃料がとても安いこともありコストが抑えられると思います。一定以上の規模がある都市であれば、大学や高専などポテンシャルのある人がいて、かつ採用の競合は多くないので可能性がありますよね。
デメリットは、「ここにこの人材がいる」という模索が孤独で大変ということです。ウーオの採用を進めていた当時はとても大変でしたね。Wantedlyあげれば連絡をもらえる、みたいなことはないので。

株式会社POLAR SHORTCUT 大久保氏
木村さんは、日本全国のスタートアップを見ていると思いますが、地域によって差や特徴があったりしますか?

ライフタイムベンチャーズ 木村氏
一次産業系はあると思います。でも、普通のITビジネスで大手企業だけが顧客ターゲットになるBtoBであれば全然違いがないですね。どんな課題を創業者が持っているかで特徴が異なってくると思います。

株式会社ウーオ 板倉氏
情報とお金に関しては修正が効くんですが、最終的な地方の課題は人だと思います。ウーオは、たまたまいい人が来てくれたので助かったんですが、そういう人材がゴロゴロいるというわけではないですね。
会社の面白さをどう伝えていくかで良い人材を迎え入れられるかが大きく左右すると思います。

株式会社POLAR SHORTCUT 大久保氏
そういった意味では、東京から地方に帰ってくるUターン人材の確保も大事になってくると思うのですが、具体的にどういう工夫をされていますか?

株式会社ウーオ 板倉氏
Wantedlyで東京にいるUターン人材にアプローチしています。当時は、広島で情報を発信している会社がなかったので、社内の情報や自身が課題に感じていることを記事にして発信しました。

株式会社POLAR SHORTCUT 大久保氏
行政が執り行うスタートアップエコシステムについて、今ある制度の改善点・要望を教えてください。

株式会社ウーオ 板倉氏
広島は、行政だけでなく金融機関含め応援してくれる環境があるんです。みんな前のめりですよ。
でも、なかなかその人たちの解像度が上がらない。行政の人がもう少し事業について理解してくれないと、その先に何があるか、何が重要か分からないですよね。何が必要なのか見極めるためにも、事業をもっと見てほしいです。事業内容の解像度をもっと上げて、お互いのイノベーションを推進して行ければと思っています。

株式会社POLAR SHORTCUT 大久保氏
エコシステムを推進する側にもスタートアップ経験者がいると良いとか?

ライフタイムベンチャーズ 木村氏
行政には要望が2つあります。
すぐに組織のせいにしないで、もっと個の力で戦ってほしいです。
例えば、オープンイノベーションが推進されている会社は、「◯◯会社の加藤さん」のように個人の名前がベンチャー起業家側に周知されています。会社でできるできないは後で、まず個人の意見を持つこと。持ち帰って検討するにしても、前向きかそうでないかを表明できる人が行政にもいてほしいです。
もう一つは、地方が若者を軽視する傾向があるんです。大学内でも起業したい学生がいたりしますが、全然応援されていないんです。若さは魅力の内です。応援することで、地元で起業してくれるかもしれません。みんなで育てていく意識が大事だと思います。

株式会社POLAR SHORTCUT 大久保氏
行政エコシステムを支援する側、地方での起業を検討している人へエールをお願いします。

株式会社ウーオ 板倉氏
地方起業家へは、東京と比べてメリット・デメリットは色々あります。地方だから足りないものもありますが、他で圧倒的な強みを作ってその差を埋めることが大事だと思います。なぜ起業したのか、きっかけを忘れないで他責にしない。自分で作り上げたことを走り続ける強い志を持ち、頑張ってほしいです。

ライフタイムベンチャーズ 木村氏
東京のVCと言うと身構えられてしまうことも多いのですが、創業前でもカジュアルに相談受けていきたいと思っています。
北海道の方には、板倉さんが北海道の魚を何倍も高く売るので、水産業関係者や飲食店小売りの方にはウーオのサイト見ていただきたいですね。

株式会社POLAR SHORTCUT 大久保氏
札幌の起業家にとって参考になる話だったのではないでしょうか。北海道でチャレンジしていく人が増えれば良いなと思います。ありがとうございました。