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【NoMapsレポート】STARSセッション~先輩起業家が語る「しくじり」から学ぼう~

北海道・札幌を舞台に、カンファレンス・展示・イベント・交流・実証実験などを展開し、クリエイティブな発想や技術で、次の社会・未来を創るためのコンベンション『NoMaps』。過去、STARTUP CITY SAPPOROでも取材させていただきました!2020年はそのNoMapsとSTARTUP CITY SAPPORO事務局が連携し、8つのオンラインカンファレンスを実施いたしました。

今回は、NoMaps3日目、10月16日(金)18:00〜18:50で行われた『STARSセッション~先輩起業家が語る「しくじり」から学ぼう~』のトークセッションレポートをお届けいたします!

札幌を牽引する若手経営者による「しくじり」セッション。2000年代に起業し、互いに親交のある3名の登壇です。NoMaps会期の金曜日の夜ということもあり、サッポロクラシックで乾杯するところから始まりました。

坪井氏の「スタートアップの失敗する確率は93%」という言葉から始まったこのセッション。リリースしたサービスが競合に負けた話、リリースしたプロダクトが全く売れなかった話、経営者が妥協して決断すると成功しない話、組織づくりに大事なことなどを聞くことができました。

登壇者プロフィール

坪井 大輔(写真中央)
株式会社INDETAIL代表取締役 CEO
1977年生まれ。小樽商科大学大学院アントレプレナーシップ専攻MBA取得。北海道科学大学客員教授、ベンチャー企業社外取締役、(一社)ブロックチェーン北海道イノベーションプログラム(BHIP) 代表理事も務める。シリアルアントレプレナーとして事業売却を多数経験。16年よりブロックチェーンの取組みを開始。実証実験などのユースケースを築き上げる一方、啓蒙活動として年間30以上の講演を 全国で行う。最近ではトークンコミュニティとオンラインサロンの親和性に着目し「ONSALO」という オンラインサロン事業を開始。著書には『WHY BLOCKCHAIN』『OUT of FOCUS』(翔泳社)なとどがある。
https://www.indetail.co.jp/

福西 伸康(写真右)
株式会社エスプランニング 代表取締役
大学受験に失敗し飲食店経営など転々と経験後、2004年に趣味のプログラミングでソフトウェアを開発する株式会社エスプランニングを創業。2014年には子会社として外国人観光客対応ITサービスのセカイメニュー株式会社を設立。現職をつつけながら餃子バーのマスターとして店に立つ傍ら、ライトノベル作家としても令和元年デビュー(ファンタジーには馴染めない ~アラフォー男、ハードモード異世界に転移したけど結局無双~ KADOKAWAドラゴンノベルス)
https://es-planning.jp/

モデレータ

入澤 拓也(写真左)
エコモット株式会社 代表取締役
1980年生まれ、北海道札幌市出身。映画監督に憧れ、単身シアトルへ行くも当時最先端のITに触れ、没頭するようになる。帰国後の2002年クリプトン・フューチャー・メディア(株)に就職。2007年環境・携帯・北海道をテーマにしたエコモット株式会社を起業。IoTインテグレーション(インターネットと物の一体化)事業を展開。環境に優しく、コストを削減するロードヒーティング(道路の雪や氷を溶かす施設)の遠隔監視システムなど様々なITソリューションを提案する。北海道から始まり、全国へ展開。2017年上場。「北海道IT推進協会」会長、「北海道モバイルコンテンツ推進協議会」副会長、「さっぽろイノベーションラボ」理事などを務める。
https://www.ecomott.co.jp/

早すぎて、失敗?

エコモット株式会社 入澤氏
早すぎて失敗するパターンをお二人にお聞きしたいです。例えば、福西さんの「セカイメニュー」というサービスですが、セカイメニューをリリースした2014年、いまの時代だったらもっと売れてたと思うんですが。

※外国人観光客が飲食店でのオーダーの際、卓上に置かれたQRコードをスマートフォンで読み込むことで母国語でメニューを閲覧、オーダーまで行えるサービス。2014年リリース。
http://sekaime.nu/ja/

株式会社エスプランニング 福西氏
当時引き合いはそこそこあったんですよ。だけど、営業してみると飲食店の温度感はそうでもなかったんです。2020年東京オリンピックがあるのでニーズがあるだろうと思い作ったんですが、当時は東京オリンピックも6年後、飲食店としては現実感がなかったんだと思います。でもようやくオリンピックも近づいてきて、外国語を話せる従業員をなかなか採用できないとか、外国人観光客が増えてきたとか、ニーズが顕在化してきて引き合いが盛り上がってきたなと思ったら、新型コロナウイルスで止めを刺されましたね(笑)

エコモット株式会社 入澤氏
坪井さんのMOREMALLというショッピングサイトをつくるサービス、BASEよりも前に始めていましたよね?

※株式会社INDETAILが2014年にリリースしたオンラインショッピングモールサービス。2017年にサービス終了。
https://www.indetail.co.jp/news/170501/

株式会社INDETAIL 坪井氏
実はMOREMALL、メルカリとBASEとほぼ同時にリリースしたんですよ。僕らMOREMALLは「個人でお店を開けます」という打ち出し方だったんです。システムは一緒なんですが、打ち出し方がメルカリやBASEと違うんですよね。
「ネットでフリマができます」「個人で売買できます」というのと、「個人でお店を開けます」という打ち出し方がサービスの明暗を分けたと思っていて、何故かというとお店ってハードルが高そうじゃないですか。お店を開くこと自体が障壁があるけど、個人でモノは売りたかったんですね。ほぼ同時にリリースして、MOREMALL以外上場してるんですよ(笑)

株式会社INDETAIL 坪井氏
MOREMALLは事業売却しているので事業的には失敗じゃないんですけど、ビジョン的には失敗だったでしょうね。でもMOREMALLを作ったからブロックチェーンをやろうと思ったんです。
MOREMALLは個人間売買が必要なのですが、個人間でも信頼を持ってお金のやり取りができるようになると良いと思ったんです。それをやる手段がブロックチェーンだったんですよ。「しくじりMOREMALL」からの「ブロックチェーン」です!

あのとき、こうしておけば…

エコモット株式会社 入澤氏
自分の経験から、しくじりから転換する、ということがたくさんあったので紹介したいと思います。元々ある融雪システム遠隔監視ソリューション『ゆりもっと』という商品を転用して農地監視システム『かかしくん』というプロダクトを作ったんです。でも全く売れなかったんです(笑)しかし、この『かかしくん』を見た建設コンサルの人から「これは建設現場に良いと思う」というアドバイスを貰って、建設現場で事業を始めたんです。今は、建設情報化施行支援ソリューション『現場ロイド』というプロダクトを提供しています。
その他にも、とにかく色々作ったんですよ。『携帯写メチラシ』『押忍!水番長』『除雪ファイターズ』とか、パンフレットやチラシやウェブサイト等たくさん作ったんですけど全く売れなかったんですね(笑)だけど、これがあったから今の事業に生きてたりするんですよね。

なんだかんだ失敗しても何とか立ち上がってこらえているので、失敗を恐れず立ち向かってほしいなと思います。

起業する人に対してどういうことを大事にしたらいいか

株式会社INDETAIL 坪井氏
結局「未来をどうみるか」だと思います。起業した当初は小さいので世の中に影響を及ぼすのは数年後じゃないですか。数年後を見て起業しないと、今の流行りだからといって起業したとしても追いつかない、自分たちの企業が大きくなったときそのはやりは無いですよね。世の中どう変わるのか、数年後を見れるかってとても大事だと思います。

エコモット株式会社 入澤氏
でもコロナで違う世の中になりましたよね。

株式会社INDETAIL 坪井氏
僕は、「量より質」「有形固定資産じゃなくて無形資産」とかが大事になってくると思う。僕の事業って、知財権を売ってるんですよ。事業をやったら、そのアイディアと実績を大手に売るんです。そういう新しい取り組みにチャレンジしてるんですが、サービスだけじゃなくて、経営自体のスタイルもちょっと考えていかないとwithコロナ、afterコロナに対応していけないんじゃないかと思います。

株式会社エスプランニング 福西氏
働き方自体が、概念から変わってきていると思っています。
起業する人ももちろん当たり前ですけど、起業家として「仕事ってなんだろう」って考えてほしいと思います。人の役に立って対価をもらって利益を出すのが仕事だと思うんですよ、経営者の人は皆そう思っていると思うんですが、言われたことを仕事だと思っている方もいます。言われたことをやることに価値があるんじゃなくて、よりゼロから価値を作っていくことが大事になってくると思います。コロナがあって、より本質的なところに寄っていっていっていると思います。

エコモット株式会社 入澤氏
僕らが起業して10年くらい経ちましたが、その10年で世の中相当変化していると思います。

株式会社INDETAIL 坪井氏
そうですね、僕が創業した2009年はAndroidが本当にひどかった時代です(笑)世の中、Androidと言えばKDDIの機種だと思われていた頃ですよ!

エコモット株式会社 入澤氏
だからこれから起業する人と、10年前に起業した人は全然環境が違いますよね。

株式会社INDETAIL 坪井氏
今の時代はお金が余っていますよね。一回焼け野原になったときはスタートアップとしてはチャンスですよね。この1年は本当にチャンスだと思いますね。

株式会社エスプランニング 福西氏
お二人はエクイティちゃんとしてるじゃないですか(笑)外からエクイティ入れて、早めに売りに出してフェーズをどんどん進めていく、それって大変ですけど非常に大事だと思ってます。
うち自己資本のみで儲からなくていいやと思ってるところがあるから甘いなと思っていて、エクイティ入れるというか関係者増やしてよりスケールしていくのが大事だと思いますよね。

エコモット株式会社 入澤氏
今日言ってませんが資本計画めちゃくちゃ失敗してるんですよね(笑)
資金調達するとき、エクイティ入れるときの計算が分からないから、30歳のとき言われるがまま資金を入れられ、結果的に株式のシェアを多く持ってない状況になっていました。でも、資本が入ることで気合は入りましたよね。外部資本を入れるのは非常にいいことだと思います。

株式会社INDETAIL 坪井氏
自分だけのエゴではなくて、人のためとか株主のためという考え方になりますよね。そうなると、スタートアップの成長の勢いが変わっていきますよね。

エコモット株式会社 入澤氏
「起業してみたいんだけどお金が…」という人いるんだけど、外部から入れたりすればいいじゃんって思うんですよ。お金のどうにかするやり方なんて、いくらでもありますよね。

株式会社エスプランニング 福西氏
そこに時間をかける方がもったいないです。

エコモット株式会社 入澤氏
僕たちは次々に事業を作っていて、だからたくさん失敗することもあるんです。でも、8勝7敗くらいでなんとか勝ち越せている状況だと思うんですけど。でも最初の1敗すらできない人もいますよね。

株式会社INDETAIL 坪井行動に起こせないってことは、単純に情報量が足りていないだけだと思います。自分のマインドが整理されてないので、逆に「これでいける」っていう情報量が必要だと思います。結局は情報収集に対して時間を費やしてないんですよね、経営オタクになるくらいの時間を費やさないとだめだと思います。

株式会社INDETAIL 坪井氏
僕、質問してもいいですか?スタートアップとしてグローバルに行くべきか、日本に行くべきか、北海道に行くべきかって、若手にアドバイスするときどうしてますか?

エコモット株式会社 入澤氏
難しいですね(笑)一つ言えるのは、WHY北海道?に答えられないといけないと思ってます。その事業をやるのになぜ北海道にするのか。例えばセカイメニューやるなら東京でやるほうが良いわけですよ(笑)マスのものをやろうとしたら東京のほうが良いと思うんですよね。だから、どうしてこの事業を北海道でやるのかを答えられなきゃいけないと思うんですよね。
北海道で起業して世界に行けるとベストかなと思います。

株式会社エスプランニング 福西氏
そうですね、下手に日本市場を考えちゃうと、東京でやったほうが良いですよね。だからローカルでやるのか、オーバーシーを選ぶかですよね。

株式会社INDETAIL 坪井氏
僕は郷土愛がないですが、WHY北海道の理由が郷土愛ではないんです。郷土愛って投資家から見てどうでもいいですよ。
例えば甲子園を考えると、絶対弱い地域の方が甲子園いけるじゃないですか。それってビジネスでも同じことが言えると思っていて。僕は北海道である程度有名になって「北海道で有名な坪井さんです」って紹介してもらうのですが、そうすると東京の大手の人がめちゃくちゃ会ってくれるんですよね。そのほうがビジネスしやすいよねっていう感覚です。

株式会社エスプランニング 福西氏
おれ北海道わりと好きなんで(笑)
なんで北海道でやるのかというのを大事にしているつもりです。好きであるか嫌いであるかは大した差じゃないんですよね。

エコモット株式会社 入澤氏
IT関連でいうと、北海道にはエンジニアがたくさんいるし、コミュニティが狭いから情報も入ってくるし、ITサービスを北海道から作るっていうのはすごく良いことだと思います。
グローバルでやっていくというのは挑戦していきたいと僕自身も思っていますね。

大いに失敗しても、最後に立っていればいい。

株式会社INDETAIL 坪井氏
失敗の裏に成功があるじゃないですけど、これだめこれだめっていうのを続けて最終的に良いものができると思うんですよ。何回失敗したら成功のくじを引けるかは人それぞれで、いきなり成功を引く人もいますけど、そもそもくじの数を引けるのは情報収集が大事です。自信がないなら自信を持てるだけの情報を持つ必要があります。

株式会社エスプランニング 福西氏
札幌がとても良くなってきていると思うのが、上場したりバイアウトしたりしてお金を持った人が増えてきたことです。その人達はお金をかけてやったことが回収できない失敗をたくさんしていますよね。これからスタートアップでやってくる人たちが「じゃあそんなに金があるなら投資してくれよ!」って言いやすくなったんじゃないかな、お金持ってるわけじゃないですか(笑)
そういう意味では良い時代になったと思います。

エコモット株式会社 入澤氏
STARTUP CITY SAPPOROがスタートアップを増やしていこうという取り組みの中で、我々のような先輩起業家が、次の世代の人達にバトンを渡したいと思ったんですよね。大いに失敗しても、最後立っていればいいと思うんです。起業に積極的になって、頑張ってほしいと思います。