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【NoMapsレポート】トップキャピタリストが考える、スタートアップが成長・IPOするための条件

【NoMapsレポート】トップキャピタリストが考える、スタートアップが成長・IPOするための条件

北海道・札幌を舞台に、カンファレンス・展示・イベント・交流・実証実験などを展開し、クリエイティブな発想や技術で、次の社会・未来を創るためのコンベンション『NoMaps』。過去、STARTUP CITY SAPPOROでも取材させていただきました!2020年はそのNoMapsとSTARTUP CITY SAPPORO事務局が連携し、8つのオンラインカンファレンスを実施いたします。
今回は、NoMaps2日目、10月15日(木)10:00〜11:30で行われた『トップキャピタリストが考える、スタートアップが成長・IPOするための条件』のトークセッションレポートをお届けいたします!

登壇者プロフィール

今野 穣
グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー
2006年グロービス・キャピタル・パートナーズ入社、2012年同社パートナー、COO就任(現任)。2018年同社代表パートナーに就任。
主な投資担当先は、アカツキ、ライフネット生命保険、みんなのウェディング、ブイキューブ、Quipper、スマートニュース、Visional(旧ビズリーチ)、yappli、アンドパッド、akippa、Creema、リノベる。アグリメディア、READYFOR、FLYWHEELなど。
同社以前は、経営コンサルティング会社(現PwC)にて、プロジェクトマネジャーを歴任。東京大学法学部卒。

坂本 教晃
UTEC 取締役 / パートナー
経済産業省では、中小企業金融円滑化関連法案や家電リサイクル法の法案作成業務や未踏ソフトウェアプロジェクトに従事。退官後、アパレル流通のファミリービジネスに参画し、新規事業立上げ及び事業整理を実施。
McKinsey&Companyでは、日本・東南アジア・欧州を中心に製薬、医療機器、自動車、ハイテク、消費財、金融機関等の業界各社に対し、営業・マーケティング、SCM、M&Aに関するプロジェクトに従事。
これまで株式会社自律制御システム研究所/ACSL(6232)、株式会社ニューラルポケット(4056)等の役員を務めた。

モデレーター

宇壽山 図南
株式会社東京証券取引所 上場推進部課長
1974年 宮城県生まれ。1997年に株式会社東京証券取引所入社。2002年から2007年まで、上場審査部で新規上場申請会社の審査業務に従事。2012年6月より現職。現在は新規株式公開(IPO)の支援業務に従事。2017年11月の七十七銀行、東北大学及び東証との3社による連携協定締結をはじめ、地域金融機関と東証との連携プロジェクトリーダーとして主体的に関わる。1997年 上智大学経済学部卒業。2010年 一橋大学大学院 国際企業戦略研究科 修士課程(MBA)修了。

■会社の事業をスケールさせるために、VCはどのような役割を果たしていますか?VC投資は、どんなときに必要ですか?

グロービス・キャピタル・パートナーズ 今野氏
資金需要が最優先ですが、教科書的に言うと、当然株主として入るので、何かしらの出口(上場やM&A)に辿り着く手伝いをするということになります。
VCの仕事は、お金がない資源がないところには資源を供給する、VCが入ることで信頼補完をするなど、いろんなポイントで役割が違います。

”偉い””偉くない”ではなく、VCは投資先の黒子であり、先に生きてノウハウがある親のようなものだと思っています。大人になっていく投資先や起業家に伴走する役割です。
その中で実は一番大事なのが、悩みを一番最初に相談できる社外の人という心理的距離をつくること。四方山相談なんですよ。プライベートも含めて、社長は孤独なので、最初に相談したいと思ってもらえる人になるのが大事だと思っています。

UTEC 坂本氏
当然”キャピタル”なので資金調達という面はありますよね。
シード期の段階で3億円くらい調達するというのは、例えるならば自転車に2トンエンジンを積むようなもので、成長痛を伴います。でも成長の激しいマーケットだと、早く走ることが大事ですし、壊れながらも修復しつつ走るしかないんですよね。成功のチェックボックスはありませんが、失敗はかなり共通項があるんです。VCは、失敗バンクでもあるんです。
だから経営陣と信頼関係をしっかり作り、一番に電話してくれるような関係性を作ります。

■キャピタリストとして嬉しい瞬間はどんなとき?

グロービス・キャピタル・パートナーズ 今野氏
嬉しいことは3つあります。
1つ目は、社員が増えていく姿を見たとき。社員集会などに呼ばれるのですが、数人が数百人に社員が増えていく光景は非常に嬉しいですね。
2つ目は、電車の中で投資先のサービスを使っている人を見たときです。
3つ目は、投資先の経営陣の成長です。たまに営業に同行すると、数年間でとても頼もしくなり、そんな姿を見て涙ぐんだり。
実はIPOとかはもちろん嬉しいんですが、それよりも寂しさのような感情が大きいんです。イメージするなら「娘の嫁入り」みたいな気持ちです。

UTEC 坂本氏
私は、アフリカで電力サービスを提供しているWASSHA株式会社という会社に投資しています。そのWASSHA株式会社が提供しているランタンで明るくなっているアフリカの町を見た時です。その明かりによって、子どもが勉強できるようになり、家事ができるようになり、人の人生にインパクトを与えていると感じました。VCは非常にやりがいがある仕事だと思います。

■起業家はVCと出会うためには、どうすればいい?

UTEC 坂本氏
実は、私たちが起業家と出会うのは、7割が紹介です。
個人的に止めたほうがいいと思うのは、ウェブサイトのインフォメーションからメールを送ること。とても効率が悪いですよね。

グロービス・キャピタル・パートナーズ 今野氏
なぜウェブサイトのインフォメーションからメールを送るのが良くないのかというと、「インフォメーションに送るしか出来ない経営者」という判断をしてしまうからです。つまり、私たちはスタートアップのコミュニティでしっかり関係性を作れるのかというのを見るんです。有力な紹介者にアクセスできるかが大事で、紹介者でかなりラベリングしてしまいますね。傾向としては、一度VC側で検討し、YES/NOが出てしまうとそれを覆すのはなかなか難しいんです。なので、ファーストアクセスから資質を見ていると言っても過言ではありません。

UTEC 坂本氏
誰からの紹介か、というのはとても大事です。「この人だったら変な人は紹介しないだろう」というのがありますね。

グロービス・キャピタル・パートナーズ 今野氏
起業家もVCを選ぶべきだと思います。なのにインフォメーションから連絡、というのはありえないですよね。大胆というか、単純に準備していないだけだと捉えます。

東京証券取引所 宇壽山氏
起業家とキャピタリストに距離は関係ありますか?

UTEC 坂本氏
我々が海外投資をするときは、ローカルVCと共同で実施するというのが基本で、単独でやることはないんです。北海道ベンチャーキャピタルと一緒にやってはいますが、北海道はすごく近いですよね、すぐに行くことができます。

■キャピタリストが投資したくなる会社はどんな会社ですか?

UTEC 坂本氏
個人的に、投資に至るまで大変そうだなと思う方が好きで、そういう企業にこそ投資したくなりますね。投資に至るまですんなり行き過ぎるのは逆にちょっと危ないと思ってしまいます。うまい案件はなくて、フロントヘビーの方が効率的だなと。
投資した後はテーブルの同じ側に座るから、しっかり交渉できる人が大事です。年間100人くらいの起業家と会って、2回目のミーティングをするのは10件に1件くらいです。

東京証券取引所 宇壽山氏
2回目も会いたいと思う理由は何でしょうか?

UTEC 坂本氏
嘘をつかない経営者でしょうか。何が本当で何を吹かして言っているのかを、本音で言えることが大事。邪念なく好きだと思えるかですよね。もちろんVCも様々な邪念が入るのですが、それを排除しても好きになれる経営者と付き合っています。

グロービス・キャピタル・パートナーズ 今野氏
キャピタリストは、投資先と誠実に向き合う役割ですよね。

UTEC 坂本氏
VCにはビギナーズラックがあって、初めての案件が意外と上手くいくことが多いんです。初めてって相手と真摯に向き合えたりするんですよね。

東京証券取引所 宇壽山氏
では今野さんいかがでしょうか。

グロービス・キャピタル・パートナーズ 今野氏
投資したくなる経営者に関しては、3つ大事なことがあると思います。
1つ目は、人たらしであること。応援者をたくさん作れること、好かれること、そして採用力に関係してきます。
2つ目は、健全なモチベーションか。「大手企業で上手くいかなかったけど俺は出来ると思っている」といった自分の正当化のための起業は厳しいものがあると思います。モチベーションの源泉はどこかを必ず探ります。
3つ目は、あとは、最初にお会いしてから投資するまでの成長の変化率は見ています。やっぱり今後長い間ご一緒するので、これは客観的にではなく僕個人でどう思うかを基準にしています。

■投資金額や投資条件はどうやって決めているのか?

UTEC 坂本氏
時代のスタンダードがありますね。

東京証券取引所 宇壽山氏
起業家も、ベンチャーキャピタル協会で勉強していくのが良いですか?

グロービス・キャピタル・パートナーズ 今野氏
ウルトラCはないと思うのが良いと思います。
投資金額の決定にはマイルストーンをかなり気にします。時価総額は非連続、事業の価値は意味のあるマイルストーンを達成して上がるものなので、逆三角形のところでファイナンスすることが適切です。新しいステージに持っていくところでファイナンスするんです。なので、マイルストーンを超えるための金額となりますね。
相場は決まっているので、プラスアルファが必要であれば出口の大きさ(イグジットプラン)をアピールする必要があります。
VCからコミットがほしいのであれば、関わるVCを絞った方が良いと思います。

UTEC 坂本氏
投資割合ついてはその通りですね。基本的に弊社が投資するときは、リードVCしかやりませんし、取締役や監査役も派遣してフルコミットで、という前提なので。
分散することでリターンがゼロになってしまうこともあります。集中することでプラスになりますから。

■キャピタリストはどんなサポートをしていますか?

グロービス・キャピタル・パートナーズ 今野氏
今後、投資先の起業家たちだけで解決していかなくてはいけないことを考えると、VCが入り込み過ぎてはいけないと気をつけています。ちょっとした経営体制の整理や、力学の調整で、組織はガラリと変わりますから、そのアドバイスをしたりしています。前に出すぎないようにすべきですが、大事なところで局面を変えたり打開していく役割ですね。

■「投資した会社がうまくスケールしない」「投資を見送った会社が大きくスケールした」という経験はある?

グロービス・キャピタル・パートナーズ 今野氏
過去、ゲーム会社に投資しましたが、ガラケーからスマートフォンが主流になったことで、ゲーム開発に必要な技術者も違うなど大きくルールが変わってしまい、スケール化に失敗したことがあります。
逆に、オンラインの写真現像サービスには2回投資していて、15年前は失敗し、数年前は成功したんです。その理由は、通信環境が充実したからだと考えています。市場の変化・進化を読み切るのは非常に難しいですよね。

UTEC 坂本氏
テックベンチャーは、システム開発がうまくいかないリスクを踏まえた上で投資を判断します。「思ったより進みませんでした」みたいなことはありますね。かなりのお金をつぎ込んでも起こることですし、一部仕方がない面もあるかなと思っています。テックベンチャーに投資する場合は想定すべきリスクです。
スピードの場合は、会社の成長よりも、今いるお客さんが受け入れてくれるスピードを見誤る事はあります。投資を見送ってしまった見逃し事例も、やはりとても多いですね。

■IPO・MAのターゲットはどんなタイミング?起業家にどんなアドバイスをしている?

UTEC 坂本氏
一般論として、「東証の上場基準」と「上場後のマーケットの評価基準」が完全に一致することはないと思います。そして「会社の今後の成長」とも完全に一致することはないと思うんです。この3点をどう平仄を合わせていくかが大事だと思います。
東証は黒字赤字での評価が非常に大きく、それが上場後の評価に大きく影響しています。つまり上場するために、短期的に黒字にしようとしてしまうので、それが将来の成長を妨げることになっては絶対にだめだと強く思っています。
我々UTECが支援しているのは研究型が多く、赤字が大きいです。バイオは赤字OKで、それ以外の赤字は…といったものがなんとなくありますよね。やっぱりマーケットがどう見られているかに引っ張られますね。

グロービス・キャピタル・パートナーズ 今野氏
そうなんです。上場基準をクリアするために、場合によっては起業の成長を止めることも必要になってくる。それをどう捉えるかというのは非常に難しい問題です。
IPOやM&Aのタイミングに関しては、先述した非連続の成長は、上場にも当てはまると思っています。海外進出してからなのか、初物として注目を浴びる方が良いのか、マイルストーン的な話がある場合、その判断は難しいですよね。資金調達のイベントとしてパブリックにするか、プライベートでファイナンスしたほうが良いのかも考えます。

UTEC 坂本氏
日本はIPOが早すぎるんじゃないか、小さいIPOが多すぎるのではないかという課題感がありますよね。逆にアメリカはIPOをしないで滞留するデカコーンみたいなのが多いのでそれが課題とされています。どの市場も解を出せていないことではありますよね。ベンチャー企業のグロースは一筋縄では行かないですね。

■これから注目する事業エリア、テクノロジー、研究分野を教えてください。

UTEC 坂本氏
これからの日本の10年間は、最も少子高齢化が進む10年になると思います。その大きな変化がポリティカルにも出てくるでしょうね。その中で日本の最大な社会課題である少子高齢化はとても大きいのではないでしょうか。
あとは、新型コロナウイルスで一斉に始まった大きな変化、その環境に最適化されたものが出てきてないので、実はチャンスがある領域だと思います。
分野としては、ITセクターでいうとニューロサイエンス領域です。

グロービス・キャピタル・パートナーズ 今野氏
インターネットはダウンサイジングとパーソナライズの歴史だと思っています。なので「個対個」を新しいテクノロジーを使って繋いでいくことが加速すると思っています。
また、コンシューマーインターネットは、しばらく大波が来てないですよね。Facebookが10年後もあるか、というとそれも分かりません。
あとは、第一次産業のDXは進んでいくと思います。

■メッセージ

UTEC 坂本氏
「東京が進んでいる」と今まで言われていましたが、もうその差はほとんど感じません。新型コロナウイルスの流行によって、都市部と地方、地方と海外など距離が縮まっていますよね。
我々UTECは、多くのテクノロジーに投資してきましたが、一つの大学で閉じられている技術には投資していません。この地域だから投資する、というのはTech分野に関してはもうありえないと思うんです。”北海道だから”という壁は相当下がっていますし、クオリティの差はないと思っていますのでぜひコーポレートサイトのInformationから連絡するのではなく、ダイレクトメールをお待ちしています(笑)

グロービス・キャピタル・パートナーズ 今野氏
シードのスタートアップやテクノロジーにおいては、地域の差は殆どなくなってきていると感じています。一次産業という分野では東京よりも地方に分がありますよね。ただ、規模化に伴う採用にはネックがあるかもしれないですね。創業者を支えるNo.2、No.3という役割を担える経営人材が東京に比べると少ないと思うので、目線高く頑張って欲しいと思います。