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【イベントレポート】北海道オープンイノベーションセミナー(第1回)

2021年1月26日から3月26日までの期間、YouTube Liveにて「北海道オープンイノベーションセミナー(第1回)」を配信しております。「オープンイノベーションの取り組み・事例について」をテーマに、Creww株式会社 代表取締役の伊地知氏より、日本を取り巻くオープンイノベーションの現状や取組事例について基調講演を頂きました。また、その後のトークセッションでは、実際にオープンイノベーションによる協業を進める企業の方々をパネリストとして、「オープンイノベーションを成功に導く要素」をテーマにお話頂きました。

現在も下記URLよりセミナーの様子を閲覧することができますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。



1.基調講演

伊地知:ドイツの空飛ぶ車、ルワンダの救命ドローン、各国での無人宅配サービスカーなど、デジタルやテクノロジーの発達により、産業やビジネスの構造そのものが変わる時代に突入しています。その中で、企業は生き残りをかけて、時代の変化のスピードについていくために、自社だけでなく外部の力を借りるオープンイノベーションへの期待が高まっています。特に近年のグローバル企業の時価総額を確認すると、1995年以降に創業された新興企業が上位を占める状況にあり、オープンイノベーションの対象としても、新興企業、いわゆるスタートアップ企業の技術・サービスに多くの期待がされています。ここでいうスタートアップ企業とは、「従来の市場を対象としてスモールビジネスを展開する企業」とは区別され、「短期成長を目指す企業スタイルで、前例のないビジネスを創り新たな市場を創造し、顧客のペイン(課題)の解決を図る企業」のことを指します。

Crewwは「大挑戦時代をつくる。」のビジョンのもと社会や企業の課題解決に「挑戦したい人」を支援しておりますが、特に新規事業を創りたい大企業と今からまさに伸びようとしているスタートアップ企業をマッチングさせることに注力しております。スタートアップの価値は財務諸表だけでは図ることができないため協業判断が難しいですが、大企業の新規事業方針とスタートアップの成長線がバッティングするところを見つけることで大きなイノベーションが生まれます。

日本には現在1万社ほどのスタートアップ企業があるといわれており、全体の資金調達額は右肩上がりで増加しています。また、日本の成長戦略としてもオープンイノベーション促進に関わる施策が展開されており、その重要性は明らかとなっています。実際に大企業とスタートアップ企業の協業で、社会実装された事例も出てきており、オープンイノベーションによって社会を変えていくことができ始めていると言えます。

本セミナーでは、稲畑ファインテック様とエリー様の実際の協業実績をお話頂き、北海道でのオープンイノベーション促進の一翼を担う会になればと思います。

2.トークセッション:オープンイノベーションを成功に導く要素

基調講演の後に、日本総合研究所の井村様の司会進行のもと、化学品専門商社の稲畑産業のグループ会社である稲畑ファインテックの根上様、蚕に特化した昆虫食(SILK FOOD)の製造・生産を行うスタートアップ企業であるエリーの梶栗様に、それぞれの会社概要と2社の協業概要について、パネルディスカッション形式でお話頂きました。

プレトーク:2社のオープンイノベーションのご紹介

伊地知:協業の形式はいくつかあり、事業会社が主体となりスタートアップの技術を活用する場合と、逆にスタートアップの目指す方向に事業会社側が乗っかり共に事業を創っていく場合があります。今日お話し頂く2社については、エリー様の目指しているSILK FOODの市場を作るという目標を、事業会社側である稲畑ファインテック様が一緒に挑戦していくという形式でオープンイノベーションが進んでいます。

オープンイノベーションに取り組んだきっかけ

根上:会社として、新規事業を立ち上げる必要性がでてきたましたが、社内から新しいアイデアがなかなか出てこない状況でした。そこへ、Creww様のサービスの一環でエリー様と出会い、食品業界に昆虫食という分野があることを初めて知りました。弊社は食品を主要とした会社ではなく、昆虫食がビジネスとして成立するのかという反対意見もあり、社内で100%賛同が得られる環境ではなかったですが、新しい価値創造に挑戦するということで賛同の声も得られたため、協業するに至りました。

協業における工夫

井村:オープンイノベーションにおいて、事業会社側とスタートアップ側のスピード感の差が課題になりやすいと聞きますが、稲畑ファインテック様で、スピードを速くするために工夫されていることなどありますでしょうか。

根上:担当者である自分だけで進めていくのではなく、海外支店のネットワークや国内の協力工場のメンバーを巻き込んでいくことで会社全体の動きを早くしていくように努めています。

梶栗:稲畑ファインテック様は、社内の意思決定などスタートアップ企業のスピードに合わせてスムーズに進めてくださっているので、非常に協業がやりやすいと感じています。

伊地知:事業会社とスタートアップでは会社の構造上、時間軸が異なるもので、決して事業会社の承認プロセス等が間違っているわけではありません。その中で、文化の違う企業同士がお互いに配慮しながら、良きパートナーとして協業を進めていく関係を構築していくことが重要になります。

井村:その他、協業する上で気を付けるべきことなどありますか。

梶栗:協業の際に尊敬と配慮はしつつも、意見を述べるときに遠慮はしない方が良いと感じています。協業の際には、社員が増えたというつもりで、スタートアップ側のやりたいことを事業会社の方にどんどん伝えて、できるかできないか、どうやればできるかを議論するようにしています。

伊地知:事業会社側、特に担当者の方が、協業するスタートアップの目指すことや技術を面白いと思い、共感した上で進められるかどうかというのは重要なポイントであると思います。やらされ仕事で協業を進めていても、事業会社側を動かすことやスピーディーな対応はできないと思います。

井村:事業会社側として根上様は、昆虫食の事業を面白いと思い進めていらっしゃるからこそ、協業が上手く進んでいるのですね。

根上:本業を進めている合間にも、ふと昆虫食のことを考えてしまうほどのめりこんでいる自分がいます。自身の食品業界で培ってきた経験や、弊社の海外から原料を持ってきて国内の加工に結び付けるノウハウを、昆虫食にどうすれば活かしていくことができるか、どうやって新しい市場を作っていくか、非常に面白い仕事だと思います。

オープンイノベーションをする上で難しい点

根上:スタートアップ側から依頼される内容は、弊社の今までの事業と異なる分野であり、これまでのノウハウが活かせずに思い通りにいかない場面もいくつかあります。供給面、コスト面など、新しいことばかりでトライ&エラーするも、なかなか結果が出ないということがあります。

梶栗:スタートアップとしてこれからやりたいことが、事業会社のやりたいことから遠いということが多く、難しい点だと感じます。例えば、お金になる可能性が小さい場合、事業会社側に受け入れてもらえないということはよくあります。今回稲畑ファインテック様との協業の場合は、金額は少ないけれども、弊社から稲畑ファインテック様にお金を払い海外から供給してもらう取引が始まっていることで協力関係ができていると考えられます。

伊地知:企業のフェーズや規模が期待しているものと合うかどうかということが、協業をしていく上で非常に重要な観点だと思われます。

今後目指す姿

根上:昆虫食という新規事業において、しっかりとブランド化・市場化を実現することを目指しています。

梶栗:最終的には、生産から販売までをしっかりとする国際的な蚕原料メーカーになりたいと思っています。そのため、国内でのビジネス展開だけでなく、海外でのビジネス展開も行えるように、稲畑ファインテック様にはご協力頂きたいと思っています。

オープンイノベーションに取り組む方へのアドバイス

伊地知:今後、スタートアップ企業との連携、オープンイノベーションの機会が増えていくと考えています。その際に、スタートアップのやりたい世界観をしっかり引き出し、そこへ共感する場合に協業していくということが望ましいと考えられます。

また、協業において最初に目指すべき点は、小さいことでもよいので両社での成功体験や実績を短時間の間に創り上げることです。会社全体や協業先の期待や協力を得るためにも、スモールサクセスをいかに早くつくれるかということを意識して協業に取り組むことが重要だと考えています。

北海道でのビジネスの可能性

梶栗:エリーの事業で取り扱う「蚕」は、何を食べさせるかということも重要なポイントなので、北海道の野菜の廃材など、バイプロダクトを活用することができるのではないかと考えています。

根上:稲畑産業は北海道の余市町に農地を持っており、ブルーベリーの栽培を進めていこうとしています。また、北海道のカボチャ、アスパラ、ポテトなどを仕入れて本州の客先に販売しているということもあり、バイプロダクトの活用というのが考えられます。

井村:ぜひ北海道との事業連携も期待したいと思います。

クロージング:地方 ✕ オープンイノベーションの未来

伊地知:これからは東京だけはなく、地方にイノベーションのチャンスがあると思っています。コロナの影響で各社の新規事業への動きが停滞するのではないかという懸念がありましたが、2020年5,6月あたりから、オープンイノベーションに取り組みたいとお声がけ頂く企業は増加しているように思います。また、以前は大手企業ばかりだったのですが、今は地方の中堅企業からも問合せが多く来るようになりました。今後、地方の中堅企業がオープンイノベーション等も活用し、地域のエコシステム形成や地域活性化を牽引していくことを期待しています。

井村:札幌・北海道はスタートアップエコシステムの拠点都市に採択されていることもあり、スタートアップ企業とのオープンイノベーションなども活用して、今後さらなる盛り上がりがみられることを期待しております。