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【イベントレポート】北海道オープンイノベーションシンポジウム

【イベントレポート】北海道オープンイノベーションシンポジウム

2020年11月4日に経済産業省北海道経済産業局の主催で「北海道オープンイノベーションシンポジウム」が開催されました。「オープンイノベーションによる新事業創出に向けて」をテーマに、パネリストの方々には、北海道を代表する民間企業、国立研究所、そして福岡でイノベーションを推進する立場から、オープンイノベーションの現状や今後の期待などについてお話頂きました。当日はオンライン、オフライン合わせて、北海道を中心に100名ほどの方々にご参加頂きました。

参加者の方から大好評でしたので、今回はシンポジウムの内容をレポートさせて頂きます。

 

1.基調講演

超成長都市「福岡」の秘密 ~世界が注目するイノベーションの仕組み~  
【 福岡地域戦略推進協議会(FDC) 事務局長 石丸 修平 氏 】

まずは、シンポジウム冒頭に、福岡の成長戦略の策定から推進までを一貫して行う、産学官民一体のThink&Doタンクである福岡地域戦略推進協議会(以下、FDCと記載)事務局長の石丸さんより、福岡が取り組むイノベーション創出にむけたFDCの取り組みについてお話頂きました。

石丸:FDCは、福岡が掲げる成長戦略や政策提言の内容を実現させることを目的として、オープンイノベーションを活用しながら、新たな事業創出や社会実装化を推進していく組織です。そのためFDCは、経済界、大学、行政含めて213の会員を持ち、産学官民一体となった公共的かつ機動的な体制となっております。また、現在216社にのぼるメンバーシップ企業がおり、その半分は域外企業となっています。福岡だけにとどまらず、多様なビレッジや資本を取り入れながら、オープンイノベーションによる新たな価値や、福岡発の経済の創出を行う環境づくりを行っています。

リーマンショック以降は多くの大企業が内製のR&Dを削減した結果、外部の大学やスタートアップとの協業、いわゆるオープンイノベーション型のR&Dが一般的になりつつあります。こうしたオープンイノベーションの機運到来の中、FDCでは、特にスタートアップ企業の存在に期待しており、地域がスタートアップ促進の環境づくりを行うための支援を行っております。

本テーマである「オープンイノベーションによる新規事業創出」のためには、産学官の各主体全員が各々の役割を理解し力を持ち寄ることで、自分事としてチャレンジする環境を整えていくことが重要であると考えております。

 

2.トークセッション

オープンイノベーションによる新事業創出に向けて

  • パネリスト:
     福岡地域戦略推進協議会(FDC)事務局長           石丸 修平 氏
     北海道電力(株) 常務執行役員 総合研究所長        皆川 和志 氏
     (国研)産業技術総合研究所北海道センター所長           扇谷   悟 氏
  • ファシリテーター:
      (株)日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門          井村  圭 氏

福岡のイノベーション創出に向けたFDCの取り組み内容について説明頂いた後に、井村さんの司会進行のもと、石丸さん、皆川さん、扇谷さんに、北海道でのオープンイノベーションの必要性や、課題などについて、パネルディスカッション形式でお話頂きました。

(左から扇谷所長、皆川所長、石丸事務局長)
(ファシリテーター:日本総合研究所 井村氏)

プレトーク:オープンイノベーションの概要と取り巻く環境

井村:社外の多様なプレイヤーと協力して新たなアイデア、ニーズを見つけることで自社だけでは生み出せない新しい価値創出が可能となる点がオープンイノベーションの醍醐味です。しかし、国内におけるオープンイノベーションの状況は、その重要性がまだまだ社内で理解されていない場合が多く、欧米企業と比べてもオープンイノベーションの実施率が低いのが現状です。そんな中、国内、特に北海道でもオープンイノベーションをより推進していくために、“ヒト”が交わり、相互に刺激し、共創できる“場”づくりが必要となってきているのではないでしょうか。

 

サブテーマ①:北海道で取り組まれているオープンイノベーション

井村:産業技術総合研究所(以下、産総研と記載)、北海道電力(以下、北電と記載)のそれぞれの立場から、オープンイノベーションの取り組み等についてご説明ください。

扇谷:産総研が技術を実装化させるためには、オープンイノベーションは欠かせないものです。そして、企業を支援する立場として、オープンイノベーションを進めていく際には、産総研のイノベーションコーディネータ(IC)が活躍しております。 オープンイノベーションにはいくつかの形があります。従来のコンソーシアムタイプと呼ばれるものは、大学や研究機関が基盤技術を開発し、同じ業界の複数企業が競争領域の中で、それぞれプロダクトを開発することを理想形としています。しかし、北海道では企業側が十分に集まらないので、このタイプは難しいと感じております。また、リニアタイプ(戦略的提携型)といわれる、企業と企業、または大学との間で技術移転をおこなう形は、技術の受け手となるのが首都圏側の企業である場合が多く、北海道から技術が出ていく流れになるので好ましくありません。北海道が目指すべきは、協働実装タイプといって、異なる業界の企業が連携することで、川上から川下までみんなが儲かる連携の形ではないかと考えています。

 

皆川:北電の研究開発テーマとして、電力会社のベース領域のみを対象としていましたが、近年は北海道の地域課題解決への貢献という軸で全く新しい領域も強化領域として研究開発を行っています。こうした新しい領域を開拓するためには自前主義では限界があります。未知の領域での新しい関係構築や、既存客先とも新しい関係性の構築を意識的に進めていくことで、固定観念の打破や異なる領域の掛け算を可能とするオープンイノベーションの活用が必要と感じております。そこで、北電の研究開発において積極的にオープンイノベーションを進めていくための取り組みとして、地域と広く共創するための場「Co×Labo」と呼ばれるオープンスペースを今年4月に設置し、運用しております。

 

サブテーマ②:オープンイノベーションを成功させるために必要なポイント

井村:官民含めたオープンイノベーションの成功には、組織の壁を越えた、人材・技術・価値の交流を生むことが重要となります。各組織が壁を越え、協創していくために必要なポイントとは何でしょうか。

石丸:産業界と行政では、全く異なる文化、ロジックをもっています。特に、官民で事業を進める場合、スピード感に大きな差があります。行政は多方面の合意を得る必要があり、意思決定を慎重に行わざるを得ないが、民間は競争力確保のためにもスピード感をもって意思決定を行います。また、民間の中でも大企業とスタートアップ企業では、大きくスピード感が異なります。企業のオープンイノベーションを支援していくFDCの役割として、各組織が持つそういった背景の違いを理解した上で、合意形成を図っていくことが必要とされています。

皆川:各連携組織の文化の違いを埋めるためには、信頼関係の構築が必要と考えています。お互いがメリットを持てるように、方向性や時間軸をすり合わせていく必要があります。また、大企業側が上の立場であるかのような「協創」ではなく、同じ目線に立つ「共創」を意識して、丁寧な異文化コミュニケーションを通じて信頼関係を築いていくことが重要です。そのために北電は、連携先が大企業側に何事も相談しやすい環境を作っていくことで、お互いの疑問点をすべて解決していける場づくりに注力しています。

扇谷:連携組織の文化の違いだけでなく、基礎研究を実用化に繋げる技術移転の流れの中でも、スピード感や文化の異なりが障壁となります。産総研では、そうした研究機関から産業界への橋渡しを加速させるために、その違いを埋める役割として、イノベーションコーディネ―タ(IC)を設置しています。研究機関と産業界の両方に理解のある人材がICとして機能することで、組織間の壁を越える調整役として活躍し、共同研究数の大幅な増加といった結果に繋がりました。

井村:オープンイノベーションを成功させるためには、組織間の違いについて、相互理解を深めていく意識を持つことが必要であり、その上で、間に立って調整を行うための“組織”や“場”が重要であることが分かりました。

 

サブテーマ③:福岡のオープンイノベーションの特徴

井村:福岡でイノベーションを推進していく雰囲気が醸成されたきっかけなどありましたら教えてください。

石丸:オープンイノベーション始め、新規事業創出といった雰囲気に福岡の意識が変わったと感じるきっかけとして、2014年にスタートアップカフェという起業したいという人が自由に集まり、起業相談ができる場を作ったことが挙げられます。行政の窓口とは違って、気軽に相談に行けることで、従来行政が対応していた相談件数を、3か月で超えてしまうほど、その存在が広まっていきました。また、2017年にFukuoka Growth Nextというインキュベーション施設を作り、有望なスタートアップを一か所に集めることで、福岡のスタートアップ企業を可視化でき、そこにいけばスタートアップに会えるという環境が作られました。これらのことから、福岡で新しいことをやっていこうというオープンイノベーション推進の風土ができていったと感じています。

 

サブテーマ④:北海道のオープンイノベーションの特徴

井村:北海道が目指すオープンイノベーションとはどのようなものでしょうか。

扇谷:オープンイノベーションには、都市型と地方型があり、特に北海道は、札幌市を除いた多くの地域が、地方型になると思います。地方型では一次産業とデジタルを融合させた新しいソリューションの創出に期待をしています。例えば、今後北海道は農業の担い手が不足し、耕作放棄地が増えていくことで、海外に匹敵する大規模農業を進めていく必要があります。そういった課題解決にむけてオープンイノベーションを活用し、IoTやロボットを使った新たなサービス、ソリューションを生み出すことで、海外市場を狙うことが可能であると思っています。
また、地方型のオープンイノベーションを進めていく際に、水産や酪農といった一次産業については、九州という地域と北海道で特徴が似ている部分があると思うので、連携することが可能ではないかと期待しています。

皆川:オープンイノベーションを進めていく上で、都市型と地方型を分けて考えることは非常に重要であると考えています。札幌市については、都市型として、福岡市の取り組みを一つの成功モデルに、学ぶことが多くあると思っています。一方、地方型のオープンイノベーションについては、これからモデルを構築していく必要があると思っています。そのために、北海道内の各地域の特徴や強みを明らかにし、類似している地域で力を合わせて、成功モデルを作っていくことが必要だと思います。  また、北海道は広域分散型と積雪寒冷地という地域特性に加えて、人口減少・少子高齢化、脱炭素といった環境変動により、日本を10年先取りする「課題先進地域」であると言われています。つまり、北海道の課題を解決することは将来的に日本の課題を解決することに繋がっていくことになります。そういった課題を解決のために、北海道をテストベッドととらえて、オープンイノベーションの取り組みを加速させ、新たなソリューションを生み出していくことが求められているのではないでしょうか。

 

クロージング:

石丸:北海道内でそれぞれの地域の強みを活かしていくことで、新しい価値を創造するという話がありましたが、まさに、九州と北海道でも、互いの地域の強みを活かしながら、地域を越えた連携をしていくことが重要であり、ぜひとも将来的にコラボレーションしたいと思っています。FDCの広域連携の例として、東京でできないから福岡で実証を進めたいという話があります。九州と北海道についても、お互いが持っていない産業、資源をカバーし合う関係性を構築し、広域連携を実現できればと良いと思っています。

井村:今後ぜひとも、北海道と九州のコラボレーションが実現し、両地域ともさらなる盛り上がりがみられることを期待しております。