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札幌・北海道スタートアップ・エコシステム推進協議会 進捗報告会レポート

2021年8月24日、札幌の代表的なインキュベーション施設の一つであるEZO HUB SAPPOROにて、札幌・北海道スタートアップ・エコシステム推進協議会の進捗報告会が行われました。

2020年7月に札幌・北海道がスタートアップ・エコシステム拠点都市に選定されてから約1年が経ちました。この会の目的は、その後のスタートアップ・エコシステム拠点形成計画の進捗について、拠点都市からの進捗報告と、それに対するアドバイスや議論を踏まえて、今後の拠点都市形成に生かしていくためのものです。

内閣府や関連省庁、拠点都市審査員委員の方々が来札予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大を鑑みてオンラインでの実施となりました。オンラインにも関わらず、当日は札幌・北海道のスタートアップに携わる方々の熱気でEZO HUB SAPPOROは大きく盛り上がった3時間となりました。

まずは、札幌・北海道スタートアップ・エコシステム推進協議会会長でもある、札幌市長秋元克広氏より「コロナ禍においても、大学・行政・民間組織によるエコシステムが構築されつつある。札幌・北海道から世界を変えるような大きな産業を生み出していきたい」という開会の挨拶で報告会は始まりました。

次に、札幌市長秋元克広氏より、拠点形成計画の進捗報告です。「昨年7月に採択以来、スタートアップの機運が非常に高まっている」とし、コロナ禍においてリスクマネーの調達の難しさが世界的に懸念されていましたが、前年を上回る資金調達額を達成したことを報告しました。特に、北海道大学認定スタートアップAWL株式会社は総額20億円の大型調達を実現したり、官民問わずファンドの組成も続くなど、札幌・北海道スタートアップ・エコシステム推進協議会の課題でもあった資金調達環境の改善が確実に進んでいることを強調しました。

他には、STARTUP CITY SAPPOROやNoMapsなどエコシステム構築に向け組織の垣根を越えた連携プロジェクトの紹介がされたとともに、札幌市以外の行政の取り組みとして十勝を取り上げ、とかち・イノベーション・プログラムや、北海道スペースポートの取り組みについても触れました。そして、Open Network Lab HOKKAIDOや北海道大学のスタートアップ支援体制、北海道・大学等スタートアップ育成プラットフォームなど、産官学それぞれの分野で特に著しい活躍を見せたプロジェクトの報告が行なわれました。

次に、エコシステム構築の一翼を現場で担う、札幌・北海道内の民間企業や大学、行政が取組事例の報告を行いました。

取組事例の報告は、「ドラックストアビジネスから地域コネクティッドビジネスへ」を掲げ、民間企業ながらも本社をインキュベーションオフィス化し、ヒト・モノ・カネ・情報などが集まる場を展開しているサツドラホールディングス株式会社からスタート。民間VCである株式会社POLAR SHORTCUT、アクセラレータープログラムを展開する株式会社D2 Garageといった民間企業、スタートアップ支援体制が充実している北海道大学、公益財団法人 北海道科学技術総合振興センター(ノーステック財団)、総務省北海道総合通信局、経済産業省北海道経済産業局、帯広市と続きます。

その後、スタートアップ・エコシステム拠点都市審査委員委員長であり、総合科学技術・イノベーション会議有識者議員の上山隆大氏より、北海道の強みである一次産業と宇宙領域での兆しが見えてきたことへの評価と、北海道のエコシステムの自立的性や、北海道に内在するポテンシャルについて質問がありました。

それに対し帯広市長の米沢則寿氏は、過去にベンチャーキャピタルとして働いていた経験から北海道における一次産業のビジネスの可能性を語った上で、「エクイティで資金を調達する文化を醸成し、一次産業のビジネスボリュームの設定を的確に行えば投資家は寄ってくる」と回答し、北海道のポテンシャルを力強く伝えました。

続いて、スタートアップ企業がピッチを行いました。登壇したのは、再生医療に取り組む創薬ベンチャー株式会社RAINBOW、灯油ホームタンクIoTのゼロスペック株式会社、農家さんと獣医師のための共有型電子カルテを提供する株式会社VETELL、独自開発のエッジAI映像解析技術を用いて様々なソリューションを提供するAWL株式会社、風景を切り替えるデジタル窓で風景の流通を目指す株式会社ランドスキップ、気球を用いた宇宙実験・宇宙撮影を行う株式会社岩谷技研、ロケットの開発・製造・打ち上げを行うインターステラテクノロジズ株式会社、そして新薬の研究開発を行う株式会社エヌビィー健康研究所の全8社。一次産業、宇宙、AI、バイオといった札幌・北海道が強みを持つ領域の企業がプレゼンテーションを行いました。

その後、産官学それぞれのスタートアップシーンで活躍する6名でのパネルディスカッションに移りました。

パネルディスカッションでは、「スタートアップが描く札幌・北海道の未来」というテーマのもと、株式会社D2 Garage 代表取締役社長の佐々木智也氏がモデレーターとなり、北海道大学 産学・地域協働推進機構副機構長総長補佐 金子純一氏、北海道大学 大学院情報科学研究院情報工学部門複合情報工学分野 調和系工学研究室教授 川村秀憲氏、サツドラホールディングス株式会社 代表取締役社長兼CEO 富山浩樹氏、エコモット株式会社 代表取締役 入澤拓也氏、そして、札幌市経済観光局産業振興部 部長 坂井智則氏がパネリストとして参加しました。

モデレーターの佐々木氏から「1年を振り返ってどうだったか」という質問の投げかけからパネルディスカッションはスタート。

北海道大学教授の川村氏は「コロナの影響で、世の中が抱える矛盾が一気に吹き出し、新しいチャンスが出てきた1年。もちろん会社としては大変だった面もあるが、世の中のルールが変わるときはチャンス。そう考えると、産学官が協力すればもっとスタートアップを伸ばせると思う」と述べました。

サツドラホールディングスの富山氏も「札幌・北海道でプレイヤー立ちの活動が表に出てきて、みんな繋がり出してきた。本当にこれからだし、まさに機運が高まったと言える」と述べ、コロナ禍にも関わらず札幌・北海道のスタートアップシーンをポジティブに捉える発言が続き、「札幌市でイノベーションファンドも設立したので、首都圏のお金を呼び込み、更に盛り上げていきたい」と札幌市経済観光局産業振興部の坂井氏。

一方で、北海道大学で大学発のスタートアップを設立したばかりの金子氏は、「スタートアップは長いタームで物事を考えて準備していかないと上手くいかない。実際に大学内でスタートアップ教育と、実際に起業するのではかなりギャップがある」と課題を提示。

エコモット株式会社の代表であり、札幌・北海道で社会人向けの起業家育成プログラムSTARSも展開する入澤氏は「自身の資金調達の失敗をどんどん伝えていくことで、起業家輩出の土壌を作っていきたい」と述べ、機運が高まったとは言えど、まだまだ起業家の少ない札幌・北海道でいかに起業家を輩出していくかの議論が行なわれ、坂井氏は「札幌市として徹底的にサポートしていく。札幌・北海道はポテンシャルが非常にある、ここにいるメンバー全員で盛り上げていきたい」と語りました。

終わりに、オンライン参加上山氏より「画面を通して熱気が伝わってきた。北海道という地域が持つ可能性を再認識し、スタートアップによる北海道独立宣言といった大きなビジョンを打ち出すような、そんな展開を期待している」というお話を頂き、3時間にも渡る報告会が終了しました。

ライター:SCS事務局

岡山ひろみ

札幌出身、大樹町在住の猫を愛するWEBライター。