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【2話完結】スタートアップのありがちな失敗って…?前半

今回は、自身もスタートアップに在籍し、現在はOpen Network Lab HOKKAIDOでスタートアップが世に羽ばたくお手伝いをされている山崎清昭さんにお話を伺いました!成功したスタートアップの共通点はあるのか?逆に、失敗するスタートアップの共通点は?2話完結の長編記事、前半です!

インタビュアー 岡山ひろみ

スタートアップは成功よりも失敗を学べ!

――「本日はよろしくお願いします。ではまず、スタートアップの成功する法則を知りたいです!」

”こうすれば成功した”という成功事例の共有をしても、全く同じ条件になることがまずないので、実はあまり参考にならないことのほうが多いです。むしろ、失敗のほうが共通しています。

北海道でOpen Network Lab HOKKAIDOが始まったのも、ある程度スタートアップのノウハウを北海道に蓄積を目的としていて、そうすることで、よりチャレンジしていく人を増やし、悩みや余計なことを考えず、事業に集中できるようにしたいという思いもあります。なので今回は失敗ノウハウに関してお話しますね。

例え給料がない状態になっても頑張れるメンバーを。

――「まずは最初に陥りがちな失敗を知りたいです。創業するタイミングでの共通失敗例はありますか?例えばメンバー集めに失敗しちゃうとか。」

メンバー集めって、とても難しいんです。上場した会社を見てもらえれば一目瞭然、創業期から同じメンバーで続けているパターンはほとんどないです。二人で共同創業者としてやっていても、上場した後どちらかが辞めるパターンも多いですし…共同創業者といつまでも一緒だと思わないでも良いのではと、個人的には思っています。

もちろんとても重要なんですけどね、共同創業者って。初期段階だと、お互い給料もない状態が何年も続くことがあり得ます。その状況でも、世の中を変えるものを作りたいという思いがあるので、突き進むこともできるんですが、かと言って、やはりビジネスなので、そこに固執しすぎるのも会社としてうまくいかない局面もあるので、とても難しいですよね。

最初にぶつかる大きな問題。あなたの知らない”株式均等分割”モンダイ。

――「メンバーが揃って、法人化していきますよね。その時に気をつけたほうが良いことはありますか?」

株式を均等割にして大ハマリするパターンでしょうか。例えば株を4:3:3で持つとしますよね。そうすると、誰か一人が強い支配権を持っている訳ではないので、仲間割れをし始めたときや、お互いの意思疎通がきちんとできなくなったときに問題になりがちです。

その後の方がもっと問題で、共同創業者のうちの一人が抜けてしまったとして、共同創業者間の契約がなければ、株を買い戻せないことがあるんです。なぜかと言うと、最初100万円の資本金で始めたら、4:3:3で株を持つということは、出資金額が40万円:30万円:30万円ということですよね。その金額ならば買い戻せるかもしれませんが、外部から投資を受けて評価が上がっていると、評価額で買い戻さなきゃいけなくなるんです。最初に出したのは30万円かもしれませんが、それが何千万円にもになってしまい、創業者間で契約が無ければ、買い戻すお金が必要となってしまうことも。

あとは誰か一人抜けて、残りの二人のパワーバランスを考えた場合もそうですよね。やっぱり均等割にすると議決権が誰か一人があるわけではないので、意思の疎通や決断が非常に難しくなっていきます。

過去の経験から言うと、株式は本当に代表になる人が、ある程度集中して持つのが良いと思います。一人に集中させたとしても、そのうち投資を受けて、上場するときまでにはだいたい株が50%ぐらいまで減ってしまうので。

あと、投資する側からしても、なるべく均等割ではなく代表者に傾斜をつけた方が良いとアドバイスをすることもあります。合議制は、いつかはうまく行かなくなるので…。投資する側としては、意思決定が遅くなるので、株式の均等割を嫌がる傾向があると言えますね。

必ずしも均等割が悪いという訳では勿論ありませんが。

気軽に渡してはいけない株式。場合によっては投資を受けられない事態にも!?

――「投資を受けられないって…スタートアップにとっては絶対に避けたいことですよね?他に株に関して気をつけたほうが良いことはありますか?

北海道のように、スタートアップという企業形態が少ない地域で見られる事案で、気をつけたほうが良いことがあります。大きな額ではないのですが、『悪意なく』出資を引き受けて大きな株式比率を要求されてしまうことがあります。普通の中小企業の感覚だとありがちなパターンなのですが、スタートアップでは同じように当てはめては良くないのです。なぜなら、スタートアップはどんどん株価が上がってくので、気持ちで投資してくれた人と会社側の資本政策に歪みが生じてきて、後々買い戻す必要がでたり、その人が株を持ちすぎてて、次の投資が受けられないとか色々な問題になっちゃったりもします。

なので、株の構成は最初から慎重に考えておかないといけないのです。新たに会社を作り直して、そちらをスタートアップとしてやることにするなど、手間がかかってしまうんですね。

会社の設立年数は気にすべき大事なポイント!

――「会社の設立って、株やメンバーなど、ハマりたくないワナが多そうですね」

他にもありますよ!
会社の設立年数はスタートアップの事業自体には関係ないのですが、ピッチコンテストの登壇制限や、制度面の制限には大きく関係あります。日本国内では、創業から3年や5年に設定されていることが多いのです。なので年数をクリアするために、わざと新しく会社を作って、そこをスタートアップとして成長させるみたいなやり方もあります。

最初は意識してなかったからスモールビジネスとして始めて、上手くいきそうだからスタートアップとしてやっていこうと決心しても、期間が長引いてしまって会社としては優遇を受け入れられない状態になってしまった例もあります…出られるピッチコンテストがないとか、制度が利用できないとか結構あるので、気をつけないと。

3年が短いと思われるかもしれませんが、3年くらいである程度の形になっていないと今後のことを考えると厳しいんでね。順調なスタートアップだと3年というのは、投資ラウンドでいうシード期を抜けて、シリーズAに入る直前か直後くらいになります。なのでだいたいプロダクトもでき始めて、外部の人がきちんと評価できるようになるんです。そういう意味でも3年って案外丁度いいところなのかもしれないですね。 

一つの勝負所で、評価されるようなプロダクトと今後の将来展望が見えるのが大事ってことですね。

投資家と出会う場になるピッチコンテスト。会社設立3年目には出場を目指すのが吉。

――「”ピッチコンテストで入賞しました”のような言葉をよく見かけるのですが、そんなにピッチコンテストはスタートアップにとって大事なのでしょうか?」

札幌や北海道はまだまだですが、日本全体で考えると本当にたくさんのスタートアップ企業があります。投資家は良いスタートアップ企業と出会えることを求めていますが、数がありすぎてなかなか…。なので、スタートアップが大きなピッチイベントに出るということは、集中的にベンチャーキャピタルや投資家と機会と接触する機会になるということなので、そこは凄く重要です。

今後大幅な投資を受けたい場合や、投資家を探す場合は設立3年目には絶対ピッチコンテスト出るぞ、というスケジュール感でやっていくのが良いと思います。

”3年を目処にピッチコンテストに出る”というスケジュール感でやっていくと、比較的順調な波に乗りやすいのです。もちろん必ずしも乗れるわけではないですよ、むしろピッチコンテストに出られる時点で比較的に波に乗れているとも言えますね。

まずひとつ目の山場は、事業計画からプロダクト作って世に出せるかどうかですね。そのためにはプロダクトを作るための初期投資をきちんと外部から受けられるかどうか、です。

北海道に関しては、Open Network Lab HOKKAIDO(以下、OnlabHOKKAIDO)も含めて初期投資の投資に関しては少しずつ環境は整ってきましたが、プロダクト完成後のさらに伸ばしていくタイミングの投資に関しては、まだまだアクティブではないというのが現状です。

後半は、プロダクトを作り始めた直後からの失敗例となります!お楽しみに!

山崎清昭
株式会社D2ガレージ コミュニティマネージャー

北海道常呂郡置戸町出身。1995年に北海道工業大学(現:北海道科学大学)大学入学後、普及期直前のインターネットに魅了され中退。エンジニアとして株式会社イエローページに入社。同社がdocomoのiモード開始時に、公式コンテンツプロバイダとしてコンテンツ提供し、開発を担当。以降モバイルコンテンツ業界を中心にエンジニア・企画営業として、KLab株式会社、株式会社コロプラと東京で約15年勤務。
2012年に帰札しフリーランスエンジニアとして様々なプロジェクトに参画。2018年より北海道のスタートアップシーンを支援する、Open Netwrok Lab HOKKAIDO 立ち上げのため現職に。