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【レポート】SCSウェビナーシリーズ 北海道発 >> ポストコロナ時代に挑むスタートアップ特集 第1回 ITスタートアップ編(Part1)

【レポート】SCSウェビナーシリーズ 北海道発 >> ポストコロナ時代に挑むスタートアップ特集 第1回 ITスタートアップ編(Part1)

2020年7月9日に開催された、『SCSウェビナーシリーズ 北海道発 >> ポストコロナ時代に挑むスタートアップ特集 第1回 ITスタートアップ編』のレポートを、Part1・2の2回に分けてお届けいたします!

新型コロナウイルス禍でも起業を目指す方、または、起業後さらなる成長を目指す方に向けてのサポートを継続していくSTARTUP CITY SAPPORO事務局と、ポストコロナ時代に挑むスタートアップの成長支援に力を入れる経済産業省北海道経済産業局がタッグを組み、 IT領域、バイオヘルスケア領域からコロナに挑む北海道スタートアップを全2回に渡ってご紹介していきます。

第1回目の7月9日では、『ITスタートアップ編』とテーマを設け、AI(人工知能)の分野でイノベーションを牽引する北海道大学 川村教授による『ポストコロナ時代、AI、テクノロジーをどう活かすべきか』のプレゼンテーションに加え、IT領域でポストコロナ時代に挑戦する3社のサービスをご紹介いたしました。このPart1の記事では、川村教授によるプレゼンテーションの前半をご紹介いたします!


『ポストコロナ時代、AI、テクノロジーをどう活かすべきか』

登壇者プロフィール

川村秀憲 氏

北海道大学大学院情報科学研究院 情報理工学専攻 教授/札幌AIラボ ラボ長小学2年生よりプログラミングを始める。プログラミング、人工知能の研究をするために大学に入学。自分でプログラミング開発しつつも、自分の脳力を超えたものを作りたいと思い、ニューラルネットワーク、機械学習などへの興味を経て、創発的計算、複雑系工学に興味が広がる。マルチエージェントシステムを対象にシステム設計から応用までの研究に発展。現在、研究室に所属する学生と共に人工知能技術の社会応用、社会実装に関する実践研究を行う。

私は大学でAIやITの基礎研究をしつつ、企業との共同研究もしています。自分たちで新しくビジネスを起こそうと起業したりなど、大学にいつつ外とコラボしていくのが特徴の研究室です。大企業からスタートアップまで、ロボットや工場の製品検査、画像認識など、多岐にわたって共同研究をしてきました。

ポストコロナ時代、AI、テクノロジーをどう活かすべきか。いま正に時代が動いていて、「どうすべきか」と言い切るのは非常に難しく、なかなか答えが出ない状態です。私が一連の状況を見ていて、beforeコロナ、withコロナ、afterコロナを考えたときに、特にスタートアップを新しく作っていくときに考えなければならないことを、主に2点ピックアップしてお話したいと思います。

一つはテレワークやリモートワークのようなコミュニケーションの意義。そしてもう一つは無形資産の意義です。

テレワークの意義から考える、3つの意義

まず、内閣府が発表した科学技術施策の中で、社会がどのように発展していくかの表を見てみましょう。

狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会、そして新たな社会(society5.0)に移行する目標が掲げられてます。我々は情報社会から新たな社会へ移行するタイミングにいると言えます。一方で、日本が果たして情報社会に正しく対応できたかを考えると、議論の余地はたくさんあります。2000年前後からインターネットが普及し始めているのにも関わらず、未だに判子を押すために会社に行ってますよね。日本政府は2000年にe-Japan構想を打ち出し、そこでも”殆どの取引は電子に移行する”と考えられてましたが、20年経っても全く実現できていません。
その原因は、当時の意思決定できる人たちが、社会のテクノロジーの状況に理解が薄く、正しく使うということを想像できなかったことにあります。結局、ITやスマートフォンがある前提で考えられていないため、紙で行われてきたことをコンピュータに少し乗せただけで、情報社会を実現する気になっていたのです。
そこで残されている宿題が解決できないまま2020年になってしまい、今回の新型コロナウイルスの流行で、ITが未熟で問題を起こしたというのが浮き彫りになったと言えます。20年の日本の社会の変革の遅さを見てきたときに、AIやITそのものではなく、自然に社会がITやAIを導入できる方法を考えていくべきではないかと考えます。

まず、今後の日本社会においてどんなことが大事になっていくのか、デービッド・アトキンソンが提唱する、日本が人口減少社会に打ち勝つために取るべきマクロな3策を見てみましょう。

まずは、企業数の削減です。
日本はとても中小企業が多い国です。小さい規模で企業を運営していくのは、企業を存続させるためのオーバーヘットが非常に多く、イノベーションにかけるパワーが非常に少なくなってしまいます。中小企業が多いというのは、人口が減少していく中で労働の生産性を上げるために、足枷になるのではと指摘しています。

2つ目は、最低賃金の段階的な引き上げ、つまり日本の給料が安いということです。
賃金が安いと、優秀な人材、特に技術者が海外に流れてしまいます。技術者の賃金を引き上げていかないと日本に留まり活躍してもらうことができません。

3つ目は、女性の活躍です。外国人を連れてきて労働力を補完するという意見もありますが、魅力的な国ではない。そうすると、いま活躍の場が少ない女性の存在が非常に重要になっていきます。

スタートアップの話に戻ります。

新型コロナウイルスの影響によって、society5.0の入り口がどうなるのか。外出や移動ができないため、zoomやSlackなど、オンラインでコミュニケーションをとれるツールが一気に普及しました。これによりオフィスが不要になったり、大企業もテレワークが常態化するなど、リモートワークを前提にビジネスを組み立てる世界に移行しつつあります。

このリモートワークに関しては、スタートアップは利用すべきだと思います。その意義は、3つあります。

1.プレイスシフト
2.タイムシスト
3.ジョブ型ワーク

この3つです。

1.プレイスシフト
場所の拘束がなくなると、日本中だけでなく世界中の人と、実際に顔を合わせなくてもコミュニケーションがとれるので、時間と飛行機代の節約になります。時間や旅費の節約だけではなく、場所を選ばず東京でも海外でも関係なくビジネスを広げていくことができますね。

2.タイムシフト
プレイスシフトだけでなく時間の拘束がなくなるタイムシフトがあってこそ、リモートワークは効果を発揮します。例えば子どもがいる方々は子どもが寝てから本番、ということもありますね。従来の日本企業だとタイムシフトを取り入れた設計は難しいですが、スタートアップでは取り入れ易いでしょう。

3.ジョブ型ワーク
場所と時間がそれぞれシフトできるとなったときに、どうやって仕事の内容を決めて成果を出していくのかが大事になってきます。誰がどんな仕事をしていくのかを事前にきっちり決めて依頼し、受ける人もそれに則ってやっていく必要があります。

上記3つを意識した設計をするということは、従来のメンバーシップ型のファミリーな働き方から、ジョブ型できちんと仕事を定義して成果を見るという仕事のスタイルになっていきます。このような流れができるということは、新卒一括採用や年功序列や終身雇用に拘る必要がないので、どんどん能力主義になっていくでしょう。それは、よりスタートアップ向きな状況とも言えます。一緒に働く人を世界から募るというのもやりやすい。これらを実行しようとすると、新規にルールや組織をつくっていくスタートアップが優位性を持つ時代になります。

無形資産の意義から考える

情報化社会を経て、新たな社会、つまりAIやテクノロジーの社会になっていくに伴い、無形資産の重要性が大きくなってきました。

無形資産とは、ソフトウェア、アイディア、知識、デザイン、ビジネスモデル、データベース、社内ノウハウなど、バランスシートに乗ってこない価値のことです。

いわゆる金融資産や設備ではなく、バランスシートに載ってこないようなものでいかに会社の価値を上げていくかが重要となってきます。

無形資産の4つの特徴

無形資産を主とする企業は、無形資産の4つの特徴を理解した上で起業を経営していくことが非常に重要となってきます。それでは、その特徴4つを見てみましょう。

1.スケーラビリティであること。
例えば「AIを使って新しいサービスを作る」これはデジタル財なので、コピーしたり大きくしたりしていくときに、有形資産と比べて容易でコストがかかりません。有形資産を大きくしようとすると、例えば機械を買って、材料を買って、施設を建てて…とかかるコストが大きいですよね。このようなスケールしやすい特徴を利用できます。

2.コストのサンク性を理解すること。
サンクコスト(埋没費用)と呼ばれる経済学の考え方です。例えば、有形資産として工場を作るならば、土地や建物に投資をし、それがバランスシートに乗ってきます。あとで工場を辞めて売ろうとしたときに、資産として価値があります。
それに比べてデジタル財は、例えばサービスを作るために費やした時間や人件費などのお金は、あとで売ろうと思っても、時間やお金は消えてしまって売れませんよね。無形資産を作ってスケールさせようとするときは、サンクコストをいかに許容していくかが大事になってきます。きちんと理解してやってビジネスをやっていかないと後でニッチもサッチもいかなくなってしまいます。

3.スピルオーバーを上手く使うこと。
スピルオーバーとは、技術が漏れ出てしまうことをいいます。
例えばスタートアップが新しいビジネスをやろうとして大手と交渉した際、アイディアが大手に盗まれることもあり得ます。知財戦略特許で守ることもありますが、スピード勝負でアイディア自体をどこまで守れるかを考えると難しいのです。つまり、スピルオーバー前提でビジネスを作らなければなりません。そのときに大事なのが、スピルオーバーで利益を失う側ではなく、「世界中の、周りから漏れ出るような研究やアイディアを上手く利用する側になる」と意識することです。

それを上手に立ち振る舞う方法として、産学連携やオープンイノベーションの利用が挙げられます。大学は、目の前のビジネスのためではなく少し遠い未来の研究をしています。更にそこで生まれた技術や知識は学会で発表したり、企業と共同研究をしたり、世の中に役立てています。スタートアップの方は産学連携や大学の知識知恵などを利用し、スピルオーバーから利益を得る側にまわってください。

4.シナジーを意識する。
仲間のスタートアップをネットワーク化し、情報交換し互いに協力し合っていることが、無形資産を扱う際の起業では重要となってきます。ネットワーク化され仲間がいる状況と、単独で起業するのとを比べると、例えば大きな仕事が舞い込んで他人の力が必要になった場合、全く知らない会社に発注すると外から来たお金が外に逃げていくことになります。しかし、ネットワーク化されている中で発注すると、外から来たお金がネットワークの中に留まります。仲間の技術や実力を理解できていて信頼関係が確立されている中で仕事を頼むと、お金も技術もぐるぐるまわり蓄積されていきます。単独のスタートアップではなかなか受けられない仕事も、ネットワーク化されると受けられることができるのです。


いかがでしたでしょうか?
今回ご紹介した、2020年7月9日に開催された『SCSウェビナーシリーズ 北海道発 >> ポストコロナ時代に挑むスタートアップ特集 第1回 ITスタートアップ編』、後半部分はPart2の記事にてお届けいたします!

Part2の記事はこちらから