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「自分を信じて精一杯やる」起業という一歩を踏み出すために

単に男女が出会えるだけではありません。恋愛を成就させるために、AIがコミュニケーションをアシストしてくれる「恋愛ナビゲーション」アプリを開発しているのは、2018年のOpen Network Lab HOKKAIDO第1期Demo Dayにて最優秀賞を受賞した、株式会社AILL(エール)。今日は、株式会社AILL最高経営責任者の豊嶋千奈さんにお話を伺いました。

――恋愛ナビゲーションアプリAILLの、一番の特徴は「会話ナビゲート」だと思っているのですが、詳しく教えていただけますか?

最初はAIを利用せず同じような価値観の人たちが出会えるプラットフォームを作ったのですが、「誰と出会うか」だけでは駄目だったんです。大事なのは、「出会った後のコミュニケーション」だとわかりました。

当初、男女の仲介役を担っていたら「なんで?そこでそれ言う?」っていうことが多々ありまして(笑)。ヒアリングを重ねていくと、男女で考え方に大きな差があることが分かりました。コミュニケーションについての方向修正のアドバイスをしなければ、ずっと平行線だろうと思うほどに、男女の考え方に違いがありました。

更にリサーチを重ねていくと、若ければ若いほど、人に手助けされるのを嫌がる傾向がありました。例えば、先輩に異性を紹介されたら断りにくいじゃないですか(笑)。あと相談をためらったりとか。やはり、人に対しては気を遣ってしまいますよね。でも機械だったら、その必要はないですよね?そこで、仲介とコミュニケーションのアドバイスをAIにさせようと思ったんです。

▲スタ★アトピッチJapan参加時の資料より

――どうして恋愛ナビゲーションアプリを作ろうと思ったんですか?

理由は明快で、自分の実体験に基づいた、自分が欲しいアプリだったからです。というのも、会社員時代はがむしゃらに働いていました。仕事にもやりがいを感じ、会社も好きでしたが、働き方や心の持ち様を考えたときに、「自分の人生これだけでいいのか?」と思ってしまったんです。仕事で成果を出し、社会的には認められていましたが、1対1の承認欲求が全く満たされていなかったんです。仕事だけに偏ってくると心が荒んでくるし、周りにも優しくなれないし、そして自己中心的になっていました。このまま部下を持っても周りも不幸だと思い、管理職を打診された時に、このまま管理職になってしまうのはまずいんじゃないかと思ったんです。

この事は、私だけの問題なのか調べていくと、どうも同じ様な思いをしている人が沢山いることが分かりました。個人の幸せが実現できないのに、社会の幸せに繋がる訳がないと思いました。そこで、自分が傷つかないでコミュニケーションのアシストをしてくれる恋愛ナビゲーションアプリを作ろうと思ったんです。

▲働く女性のモヤモヤを言語化し、そこにアプローチしていく豊嶋さん。実体験から事業開発に至ったそうです。

――そもそも、どうして起業することにしたのでしょうか?

実は、会社に「辞めます」って言っちゃったんです。口に出したら、「あぁ会社辞めるんだな」って思うようになりました(笑)。

ただ、自分の中ではとても葛藤しました!起業することで、”個の充実”から、ますます遠のいてしまうと思って…でも、考えていくうちに「誰かがやらなければ、この課題は解消できないんだな」という思いが残ったんです。誰が、仕事とプライベートの両立の幸せを望む人々を、助けるんだろうか。このままではきっとみんなが疲弊してしまう。自分が気づいて、サービス設計できて、開発する環境ができているのに、ここで自分が辞めたら誰がやるんだろう。と、使命感が生まれたんですよね。

――起業してから一番辛かったエピソードを教えてください。

実は、AILLに取り組む前の会社員だった頃、経営スクールの仲間と一度起業しているんです。経営スクールにいると、なんだか自分がデキるように思えてしまって…だから使命感とかもなく起業したんです。その時に、日本政策金融公庫から1000万円の創業融資を受け、自分の貯金の殆どを出資して、会社の資本金にしたんです。一緒にやる仲間のモチベーションも全く考えずに。そうしたところ、一瞬で無くなってしまったんですよね…アウトプットも何も出ませんでした(笑)。

貯金がほとんどなってしまったので、生活水準を全て落とし、節約生活を心掛けました。東京から電車で1時間弱の、家賃が安いアパートに引っ越しました。会社員時代に好成績を出していた頃の、高飛車になっていた自分を改めることが出来たのもこの頃の生活のお陰だと思っています。

――逆に、嬉しかったエピソードはありますか?

社会って頑張っている人に優しいんです。私、最初とっても大変だったんです。貯金も全部消えてしまったし、色々大変ではあったのですが、色んな人の優しさで自分の会社を支えてもらていることに気がついたんです。

等価交換が世の中の法則だと思うんですが、私は最初返せるものが何もなくて。私の対価を相手の優しさで埋めてくれてたんです。それに気がついて、感謝の気持ちが生まれ、その積み重ねで、「もっと頑張ろう。もっと頑張ろう」と、優しさが自分の一歩を後押ししてくれたと思うんです。

――AIを使った開発はとてもお金がかかりそうなイメージがあります。投資状況について教えて頂けますか?

資本はアクセラレータープログラムOpen Network Lab HOKKAIDOに参加した時、株式で出資をして頂きましたが、自分たちが納得する本当のコアの部分が完成するまでは、ほぼ自己資金です。だから、エクイティファイナンス(投資)ではなく、デットファイナンス(融資)で工面していました。日本政策金融公庫の資本制ローン(※)で6000万を借りて、本当の初期はそれでなんとかやれました。今はプロダクトを作り始めて1年目になったので、エクイティで資金を集めよう思っています。なので、より多くの投資家に知ってもらうために、国内のピッチイベントにも出始めました。

※資本制ローンとは、自己資本とみなされる借入制度のこと。資本や借入について知りたい方は、こちらの記事『エクイティファイナンスってなんですか?』を御覧ください!

▲Open Network Lab HOKKAIDO 1st batch にて最優秀賞を受賞したときの様子。

――起業する前に経験しておくべきことはありますか?

挫折経験だと思います。挫折しながらも、何かひとつでもすごく頑張ってきたという誇りになるような経験があると、後々辛いことがあった時に踏ん張れるんじゃないかなと思います。起業ってわからないことだらけで、未知のことに毎日遭遇するので、挫折経験があると折れずに頑張れるんじゃないでしょうか。

そして、分からない中で自分たちで答えを導き出していくことの連続ですが、そういった経験がない人は小さなチャレンジから始めたら良いと思います。私は初期に大きくやりすぎちゃったから反面教師にしてもらいたいです(笑)。

――これから起業する人に向けてのメッセージをお願いします。

自分を信じてほしい。自分を信じて、精一杯やっていると道は切り開けます。頑張っている姿を見てくれている人は実はたくさんいますし、自分を信じて、まず自分がやらないと周りを巻き込められないので、最初のスタートはとにかく自分を信じて一歩踏み出して精一杯やってみることです。今までやってきたことを信じて、自分が成し遂げたい社会を目指して諦めずに進んでみたらいいと思います。

例えば、今上手くいかなくても全力でやっていくことで、それは”失敗”ではなく「得難い経験」になります。起業する人には「失敗を恐れないで!」と伝えたいです。起業の失敗は絶対失敗じゃないんです。起業して失敗したという経験は貴重だから、絶対に社会から引っ張りだこですよ、それくらい得るものは大きいと思います。

豊嶋千奈
株式会社AILL 最高経営責任者

プロフィール
大手製薬会社にてトップ営業として活躍。顧客志向を前提とした企画、戦略立案、営業を得意とする。
働く人々が仕事と愛を両立し、幸せな人生を愛する人と歩んで欲しい。といった想いのもとに創業。現在「人と人のコミュニケーション」のアルゴリズムを設計し、日本のAI先駆者である教授陣と共同開発を行なっている。

事業詳細
「人と人とのコミュニケーション方法」のアルゴリズムを設計し、人間関係を円滑にするAIを開発。Aillでは「どうすれば恋愛が進展するのか」を解き明かし、世界初のAIを使った「恋愛ナビゲーションアプリAill(エール)」を、企業の独身社員のワークライフシナジー「ライフサポート」福利厚生サービスとしてリリース。安心安全な社外の出会いと出会った後の男女の恋愛コニュニケーションをAIがナビゲート。

URL:https://aill-navi.jp/