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三度目の挑戦で掴んだチャンス。自分を信じて突き進む

「テクノロジーとデザインで、空をもっと身近なフィールドに」というミッションを掲げ、現在はドローンユーザーのプラットフォーム「Flyers」を運営する、株式会社Flyers。代表取締役の品川広樹さんは、Onlab HOKKAIDO2期に応募するも落選。悔しさをバネに再挑戦したアイデアで起業しました。

今回は、株式会社Flyers代表取締役の品川広樹さんにお話を伺いました!

株式会社Flyers代表取締役 品川 広樹
1980年、北海道札幌市生まれ。北海道芸術デザイン専門学校を卒業後、地元企業に就職。デザイナー兼エンジニアとしてアプリのUI/UXデザインやSaaS運営業務に当たる。北海道内のピッチイベントや起業アイデアコンテストで優勝経験も重ね、2020年8月にFlyersを設立。好きな言葉は「最大のリスクは、リスクを取らないこと」。

ー現在はドローンユーザーのプラットフォームFlyersにて、飛行可能なスポットの検索や、飛行申請手続きの代行をされていますね。

はい。株式会社Flyersは「テクノロジーとデザインで空をもっと身近なフィールドに」をミッションに、誰でも気軽に安全にドローンを飛ばせるよう、ドローンの統合型情報プラットフォームの開発および運営を行っています。

▲Flyersのスポット詳細画面

ー実際、日本のドローンユーザーは増えているのでしょうか?

ドローンは小型化・高性能化が進んでいて、現在は10万円くらいで超高画質で安定した空撮ができる性能の機体が手に入るようになりました。「無人航空機飛行に係る許可承認申請件数の推移」によると、国土交通省に提出されている申請が年々1万件以上ずつ増えています。つまり、ドローンを飛ばそうとしている人が確実に増えているということ。これまでドローンは特別な人が扱う機体でしたが、数年後には個人の新たな表現方法として定着していくのではないかと思っています。

一方で、ドローンの飛行に関係する規制は多く、2022年6月には航空法の改正で無人航空機の範囲拡大が行われるなど、趣味で空撮を楽しもうとする人たちにとって難しいものになってきているのも事実です。加えて、ドローンユーザーの人口が増えるにつれ、土地管理者側や飛行空間に居合わせる第三者からの理解も重要になってきます。

そこで、ドローンプラットフォームをつくれば、飛ばす人・飛ばさない人・そして土地管理者もドローンを新しい文化として許容できる一つの軸になるのではないかと考えました。

ー現在はベータ版での運用ですが、ユーザーからの反応はいかがですか?

ドローンを飛ばすには申請や届け出が必要な場合があります。しかし、飛ばしたい場所を誰が管理しているのかが分からないことが多く、ドローンユーザーのハードルの一つになっていました。Flyersが飛行手続きを代行(※)することで、ドローンユーザーの負担を軽減し、ドローン利用の促進を行っています。実際に利用いただいたユーザーの方から「手間が省けて本当に楽になった」という声や「課金してでも使っていきたい」という嬉しい声をいただいています。

※自治体への手続きについては、内容に応じて顧問の行政書士が対応。

ーこれからの事業展開を教えてください。

「いつ」「どこで」「誰が飛ばすのか」という情報が、ドローンユーザーだけでなく、土地管理者やその土地を利用する第三者にも共有できる、そんなプラットフォームを目指したいと思っています。サービス自体はアプリ化して、飛ばしたい人が簡単に届け出ることができ、自治体側はプラットフォーム上から承認処理ができ、手続き開始から10分程度で終わるようなシステムを構築をしていきたいと考えています。

そのためにも、Flyersとして連携自治体を増やしていく予定です。

ー3月4日には、経済産業省の「地域産業デジタル化支援事業」の実証事業として、経済産業省 北海道経済産業局、北海道十勝総合振興局、十勝19市町村と共にドローンを活用したアウトドア観光プロモーションの取り組みが発表されましたよね。

ドローンを使えば、人が行けないような場所から撮影することが可能です。例えば観光スポットとして海に面した展望所があるとします。展望所から写真撮影するとだいたい同じアングルの写真となりますが、ドローンなら展望所を超えた海の上から展望所にいる自分を撮影したり、高さ100mの視点に広がる壮大な景色を撮影することだって可能です。既存の観光スポットもドローンを利用することで新たな視点で楽しむことができ、そこには自治体の方々も気づいていない魅力がまだまだ存在していると思っています。

そうした映像や写真をSNSで発信することで、それを見た第三者が観光地を訪れるという好循環が生まれると考えています。

十勝ドローン特設ウェブサイト「さぁ、十勝で飛ばそう!」
https://flyers.plus/special/tokachi

ーもともとデザイナーとして活躍されていましたが、起業への思いはいつ頃から持ち始めましたか?

デザインをやっているときは起業したいとは思っていなかったのですが、プログラミングを始めてからマイクロサービスなら自分でも開発できると気づきました。そこで、まずは自分のためのツールを作ってみて、さらにそこから、たくさんの人に使ってもらえるようなサービスを展開しようと思い始めました。

起業を決意したのは、インフィニットループに就職後のことです。代表取締役の松井健太郎さんがStartupweekend(※)に関わっていたのをきっかけに、3回くらい参加したんです。2020年1月に参加者ではなくオーガナイザーとしてイベントに携わっていたのですが、イベント初日にオーガナイザーでチームを作ってイベントに参加することになりました。実はそのときのアイディアが、現在のFlyersの元になっているものです。

※Startupweekendとは、3日間でアイディアを形にする方法論を学ぶ起業体験イベントです。世界数百年で行われており、札幌では7回ほど行われています。

▲Startupweekend Sapporo vol.7 でドローンのアイディアを詰める品川さん(写真中央)

ーインフィニットループの松井さんは、北海道のスタートアップシーンを牽引する方ですよね。

はい、そうです。インフィニットループは副業に関してとても寛容で、開発などの相談や、壁打ちなどにも対応いただけたりと、私の起業を応援してくれています。

私も、松井さんのように様々な施策で北海道をもっと盛り上げていけるような存在になれたらと思っています。

ーFlyersにつながるアイディアは2020年のStartupweekendで出たそうですが、それまでもいろんなチャレンジをされていたそうですね。

2019年にOnlab HOKKAIDOの2期に応募したことや、その後に自分でサービスを作って運営してみたりしました。Onlab HOKKAIDOの2期には、北海道の送料が高いという課題に対して送料を下げられる案で応募したのですが、落選して…どうしても自分のアイディアが正しかったと証明したくて自分で作ってみたんです。過去に参加した起業イベントで学んだ方法や、Onlab HOKKAIDOの面接でのアドバイスを実践してみたのですが、色々気づいたことがあって。一人でやると限界がすぐに来てしまうんですよね。規模も小さいですしスピードも出ない。発展させるのも難しく、結局途中で頓挫してしまいました。

ーその後、2020年のStartupweekendでアイディアが生まれたんですね。

はい。その時のメンバーのうち2名が残ってくれて、私が「Onlab HOKKAIDO3期に挑戦しよう」と提案し、メンバーで何度もMTGを重ねプレゼン資料を作成しました。採択されたときは本当に嬉しかったですね…!!

ー起業への思いを持ち続けて起業されましたが、実際に起業してみてどうでしたか?

Onlab HOKKAIDOのプログラム期間中は先輩起業家の方々からたくさんのアドバイスをいただきましたし、ステップも明確だったので、スムーズに事業を進めることができました。

でもその後は、難しい場面がいくつかありましたね。特に大変だったのはチーム作りです。共同創業者は私を含めた2名でしたが、進む方向は同じなのにアプローチの仕方が違ったため、何度も議論を重ねました。想像以上に大変だと思いましたね。

大変だったこともありましたが、やってよかったと確信した嬉しい出来事もありました。

β版を立ち上げた際に、活動報告の場所としても利用するため、ドローン専用のSNSアカウントを作り、Twitter上でドローンの友だちをたくさん作ったんです。「日本のドローンの環境を良くしたいんだ」とツイートしたら、多くの人が共感してくれました。ダイレクトメッセージをくれた人もいましたし、実際にFlyersを使ってくれた方もいました。本当に嬉しかったです。

Flyersは、ユーザー同士でドローンを気軽に飛ばしに行けるような、ドローンユーザーのコミュニティサイトとしても機能させていきたいと思ってはじめた所もあり、Twitterでのやり取りや反応から、目指していたことが本当にできそうだなと、β版を運用しながら実感しました。

ー起業を考えている方にメッセージをお願いします。

大それたことは言えないのですが…やっていることを疑わずに突き進めばいいんだと思います。

例えば、いまやっていることがマイノリティで奇異な目で見られたりすることがあったとしても、何年後かに振り返ってみるとそれが大衆化していることが大いにあります。

私は一人カラオケに時期がありましたが、それを友人らに話すと「友達いないんだね」とか「一人でいって何が楽しいの?」など否定的な意見ばかりでした。しかし今となっては「ヒトカラ」という略語にもなり広く受け入れられています。ソロキャンプを楽しんでた時も同じような体験をしました(笑)。今回のドローンも自分はその流れだと確信しています。旅行で観光地を訪れたときに簡単にドローンを飛ばせて、映像にしてYoutubeやTwitterで発信したり、VLOGとして公開するのが当たり前になると思うんです。だから、自分を信じて進むことは大事なんだと思っています。

株式会社Flyers
代表取締役 品川 広樹
ドローンユーザー向けプラットフォーム『Flyers』の企画・開発・運営
https://beta.flyers.plus/

ライター:SCS事務局

岡山ひろみ

札幌出身、大樹町在住の猫を愛するWEBライター。