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大学発ベンチャーを強力にサポート! インキュベーション施設「北大ビジネス・スプリング」を訪問!

国内有数の研究・教育機関である北海道大学。北大が行う様々な分野の研究成果を活かして、多くの大学発ベンチャーが生まれています。それらベンチャーの成長を支援するインキュベーション施設が、北大北キャンパスに立地する「北大ビジネス・スプリング(以下、 北大BS)」。今回は、大学発ベンチャーの「聖地」である北大BSの活動を、入居企業の声と合わせてご紹介します。
まず、北大BSについて、インキュベーションマネージャーの伊藤宏明さんにお話を伺いました。

※インキュベーションマネージャーとは?
起業を目指す人や起業して間もない事業者に、事業の知識や、経営資源(資金・情報)など、不足するものを幅広く速やかにサポートし、日々のコミュニケーションを通じ、企業が抱える経営課題、時には事業以外についても相談相手となり、事業の成功へ導くパートナー

北大BSは、ベンチャーを成長させる施設です!

―北大BSの概要を教えてください

「北大BSは、独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構※)が設立・運営を行っているインキュベーション施設で、2009年にオープン、現在11年目です。北大BSは、北海道大学や地元自治体(北海道、札幌市)、地域の支援機関等と連携して、大学発ベンチャーの創出や中小企業等の新規事業展開を支援することを目指し日々活動しています。現在、AI/IoTやバイオ・フード系等のベンチャー企業23社が入居、3名のインキュベーションマネージャー(IM)が施設に常駐して支援を行っています。」

※中小機構とは
我が国で唯一の中小企業政策全般にわたる総合的な実施機関として設立された独立行政法人。創業支援から事業再生、人材育成、販路開拓など、成長段階に合わせた各種支援サービスを提供している。     

▲北大BS主催セミナーの様子

―中小機構が、北大BSを運営することによる入居者のメリットは何ですか?

「大きく3つあります。 
1つ目は、中小機構をはじめとした様々な公的ベンチャー支援施策を利活用できることです。
近年、中小機構では、ベンチャーの創出や発展を目的とした施策を打ち出しています。例えば、「FASTAR(https://www.smrj.go.jp/venture/acceleration/fastar/index.html)」は、将来有望なベンチャーを対象に、事業計画のブラッシュアップから資金調達、事業提携の機会を提供するアクセラレーション事業で、2019年度は北大BS入居企業から2社が採択されました。マーケティング支援では、ビジネスマッチングサイト「J-GoodTech(https://jgoodtech.jp/pub/ja/)」を通じ、国内外の大企業等とのマッチングを進めています。また、中小機構が運営する全国29のインキュベーション施設ネットワークを通じ、大企業とのマッチング案件の紹介なども行っています。

2つ目が、北大BSによる入居企業サポートです。
まず、入居企業の情報をホームページや展示会、ニュースレターなどで積極的に発信することにより、マッチングの機会を創るようにしています。その効果もあり、今までは、首都圏だけでマッチング情報が留まっていたものが、「AIなら北海道」、「食関係であれば北海道」といった問い合わせも年々増えてきてます。最近では、東京の大手食品会社が北大BSへ来訪し、入居企業とのマッチングを行った事例もありました。このほか、販路開拓としては、展示会への出展支援も継続的に行っています。また、セミナーや交流会を通じて、北大BS内のコミュニティ醸成にも力を入れており、入居企業が共同で事業に取り組んでいる例も見られます。

▲入居企業の作業を見守る伊藤さん(左から2人目)

3つ目が、北海道大学を中心とした研究機関、公的支援機関等との連携がスムーズに可能なことです。
北大BSは、「北大リサーチ&ビジネスパーク※」内に立地しており、北海道大学のほか、近隣に公的試験研究機関や支援機関等が多く立地しており、容易に連携できることが特徴です。例えば、入居企業から「○●の技術的課題を解決したい」といった声があれば、インキュベーションマネージャーが、大学研究者や当該分野に精通した研究機関の探索・紹介を行うほか、企業と研究者、支援機関等とのマッチング(コーディネート支援)も行っています。 」

※北大リサーチ&ビジネスパーク(北大R&BP)
北大北キャンパスエリアに、北海道大学ほか官民の研究所、公設試験研究機関、産学官連携支援機関等が集積し、産学官が一体となって研究開発から事業化までを一貫して推進している。現在、16の研究機関・施設が立地し、60社近くの企業が進出している。


▲北大BS入居者交流パーティー

―札幌での起業を考えている方に一言お願いします。

「札幌は、起業を目指す方には適した地域です。豊かな生活環境に恵まれているほか、研究者との連携もしやすいのも特徴です。特に、北大BSに入居することで、食やバイオ、AI、環境を研究する人たちとの繋がりができ、ベンチャーにとっては、より魅力的な製品・サービスの開発が出来ます。
 現在(2020年3月)、北大BSは満室ですが、入居者募集は、空き状況に応じて不定期に行っておりますので、北大BSのホームページ等をご確認ください!」

 続いて、入居企業を代表して、北大発認定ベンチャーのティ・アイ・エル(TIL)株式会社・CTO永田紘也さんにお話を伺いました。

北大BSに入居したことで、成長の機会を得ています!

―会社設立の経緯を教えてください。

「2015年から始まった、北大大学院情報科学研究院・調和系工学研究室と北海道ガス株式会社とのAI(人工知能)を使ったロードヒーティング※に関する共同研究がきっかけです。2017年に一定の研究成果が出たことから、社会への研究成果の還元を進めるために会社が設立されました。私は、北大大学院修士課程に在籍していたときから、ロードヒーティングシステムの製作に携わっていたこともあり、2019年の4月に正式に入社し、現在は、博士課程での研究と弊社の業務の二足のわらじを履いています。」

※ロードヒーティング
熱で道路や地面の雪を溶かす設備


▲自社製品のデモを行う永田CTO

―北大BSへの入居のきっかけは?

「北大BSには、2018年7月に入居しました。元々、本社は東京にあるのですが、ロードヒーティングなど寒冷地に係る事業を行っているため札幌にもオフィスを構えることになりました。北大BSに入居を決めた理由は、北大との距離の近さです。研究室との行き来の利便性はもちろんですが、優秀な人材の確保で大きなメリットがありました。といいますのも現在、私以外のスタッフは北大の学部生・大学院生を中心としたアルバイトなのですが、北大構内に求人掲示を出せば、相当数の応募があります。学生にとっては、授業や研究の合間にすぐに職場に行ける北大BSは、アルバイト先として魅力があるようです。」

―他に入居のメリットはありましたか?

「展示会への無料出展です。北大BSの一員として、北海道内最大の展示会『ビジネスエキスポ』に参加し、相当な広報・営業効果がありました。また、情報の収集では、北大BS内で開催されるセミナーも役立っています。他の入居企業とも交流があり、業務上のサポートを依頼したり、または逆に依頼されることもあります。」

―現在の取り組みについて教えてください。

「弊社の特徴は、AIによる画像や音声の分析結果を具体的なモノやサービスとして提供できることです。AIを使ったロードヒーティングは、エネルギーコストを最大50%削減可能とします。現在、札幌市内22か所で実証実験を行っています。
 音声認識による会話のトラブル防止サービス『RECORiS』は、現在、6社が試験導入しており、近々販売を開始します。顧客と企業とのコミュニケーションを円滑にするとともに、企業のパフォーマンス向上に役立つサービスです。
 このほか、カーシェアリングのサービスを準備しています。使っていない社用車の利活用から発想を得ており、携帯電話回線を通じて、鍵の開閉や走行状況を確認するデバイスを開発しています。」

▲ビジネスエキスポ出展の様子

―今後の展開について

「音声認識技術はピッチコンテストやお客様に好評であることから、力を入れていきたいです。将来的には、世界中の音声を集め、分析することで、新たな製品・サービスの開発が出来ればと思っています。そして、海外へのサービス展開とともに、会社の規模拡大を目指していきます!」

参考リンク
●北大BS:https://www.smrj.go.jp/incubation/ho-bis/
●TIL:https://tilab.jp/