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STARTUP CITY SAPPORO

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札幌を再びスタートアップの聖地へ導く二人

札幌を再びスタートアップの聖地へ導く二人

みなさんは、「サッポロバレー」をご存知でしょうか?いわばシリコンバレーの札幌版。北海道大学の「北大マイコン(マイクロコンピュータ)研究会」に所属していた学生たちが、後にIT関連ベンチャーを起業していきました。そうした若い企業を後押ししたのが札幌市。1986年に札幌市エレクトロニクスセンターが完成し、北海道大学から生まれた多くのベンチャー企業が、札幌駅北口に集積していきます。サッポロバレーのピークと言われている2000年には、札幌市内のアプリケーション・システム開発及び関連サービス企業約300社の総売上高が約2000億円にものぼり、「サッポロBizCafe」が設立され、北大や行政とも交流出来るような場も生まれました。しかし、それもバブル崩壊や北海道拓殖銀行の破綻などが原因で動きが目立たなくなってしまいました。

ところが、現在の札幌は、かつての「サッポロバレー」を彷彿とさせる、スタートアップのうねりを感じます。2017年から本格始動した、次の未来を創るためのコンベンション『NoMaps』。2018年には『Open Network Lab HOKKAIDO(以下、Onlab HOKKAIDO)』が始まり、2019年には札幌市・一般財団法人さっぽろ産業振興財団・株式会社D2Garageで組織するプロジェクト『STARTUP CITY SAPPORO(以下、SCS)』が始動。2020年1月には『札幌・北海道スタートアップ・エコシステム推進協議会』が設立され、同年7月には内閣府が主導で進めている『スタートアップ・エコシステム推進拠点都市』に選出されました。また、同時期にはコロナ禍にも負けず札幌の都心部に『SAPPORO Incubation Hub DRIVE』が出来て起業家たちが集まる場所になるなど、ここ近年の札幌市には、かつてのサッポロバレーを思わせる兆しを感じさせるのではないでしょうか?

この流れを作ったと言っても過言ではないのがこのお二人。札幌市スタートアップ推進担当係長である阿部正明さんと、一般財団法人さっぽろ産業振興財団プロジェクト担当課長である中本大和さんです。

プロフィール

阿部正明
札幌市 経済観光局 産業振興部 ITイノベーション課
スタートアップ推進担当係長

中本大和
一般財団法人さっぽろ産業振興財団
プロジェクト担当課長

SCS事務局
まず、なぜ札幌市はスタートアップに力を入れているのでしょうか?

札幌市経済観光局 阿部氏
30〜40年ほど前のサッポロバレーの時代は、北海道大学の卒業生たちを中心に、サッポロ駅北口付近で沢山の方々が起業していたんです。それがバブル崩壊や拓銀破綻など経済の逆風が吹いてしまい、起業の雰囲気が止まってしまったんですよね。
サッポロバレーのおかげで、実は札幌には多くのIT企業(情報通信業)があって、政令指定都市の中でも上から5番目くらいの事業者数になっているんです。でも、受託業務中心となっており、一人あたりの売上順でいくと、10位以下に下がってしまいます。
この状況を打開していくためには、新しい事業や産業を生み出し、スタートアップのような急成長企業を生み出していくことが必要だと考えたんです。

SCS事務局
力を入れ始めたのは2017年頃だったんですね!その頃お二人は同じ部署だったんですか?

一般財団法人さっぽろ産業振興財団 中本
2017年に札幌市経済観光局に阿部さんと着任しました。
同じ経済観光局でも、私(中本)は中小企業支援が担当で、融資などの相談窓口を開設したり、いわゆるスモールビジネスの支援をやっていた部署でした。
阿部さんはNoMapsとインタークロス・クリエイティブ・センターの支援などを担当していて、いわゆるスタートアップへの支援部署は市役所内になかったんですよね。これからやっていかなきゃいけないよね、という認識ありましたが「じゃあどこがやる?」という状況でした。

札幌市経済観光局 阿部氏
ITやテクノロジーを使ったイノベーションを生まれる環境を作ろうと、私と中本さんで部を飛び越えて色々とやっていたんです。同じ経済局ですけど結構席が離れていたので、席を飛び越えて大きな声で「なかもとーーーーー!!!!」って呼んだりしてましたね(笑)

一般財団法人さっぽろ産業振興財団 中本
周りから見たら「何やってんだあいつら」状態だったかもしれないですね(笑)

SCS事務局
市としてやっていかなくてはならないと思った決定的な出来事はありますか?

札幌市経済観光局 阿部氏
民間のがんばりですよね。NoMapsもOnlab HOKKAIDOも始まって、スタートアップエコシステムへの流れが生まれ始めているときに、「なんで民間がこんなにも頑張っているのに、俺たち何もやれてないんだろう」と掻き立てられたんです。だから、SCSを立ち上げました。市の新しい中期計画にも位置づけられ、スタートアップエコシステムに向けた動きが本格的に始まりました。

一般財団法人さっぽろ産業振興財団 中本
2019年から組織を越えてスタートアップをやっていこうとなりましたね。

SCS事務局
そしたらすぐに中本さんは財団に出向ですか?

一般財団法人さっぽろ産業振興財団 中本
そうですね(笑)財団としてもスタートアップの支援にコミットしていきたかったのですが、財団にはスタートアップを担当している人がいません。そこで、私が出向することで、それまでやっていた経験を財団で活かし、いろいろな方向からスタートアップ支援をしていけるようにしていきたいです。

SCS事務局
SCSについては事務局が立ち上がったのが2019年ですよね?

一般財団法人さっぽろ産業振興財団 中本
はい。SCSは、札幌市・財団・株式会社D2Grageが事務局をやっています。市、財団、民間企業が一緒になって事務局をやるのって、実はかなり珍しいことなんですよね。
市が直接スタートアップを支援する上でやりづらいこともあるんです。例えば市は公金を使っているので、特定の企業だけをバックアップしたりすることは出来ません。なのでそういうことを財団が担ったり。それぞれの特色を生かした支援をやっています。

札幌市経済観光局 阿部氏
市が行っているのは許認可関係の窓口や調整が大きいかもしれません。スタートアップはこれまでなかった事業なので、当然事例がないことの方が多いと思います。そういった事業も、私たちが窓口となって市の内部で調整し、事業を進められるようにサポートをしています。新しい取り組みをしやすい空気を作っていくということですね。行政の中でも許認可関係ってとにかくすごくいっぱいあるので、市の中で調整して導入できるように整えていきます。

一般財団法人さっぽろ産業振興財団 中本
財団は中小企業支援や販路拡大とかで、海外のチャネルがあるんです。中小だけではなくスタートアップが海外展開していくための足がかりを作れるようにしたいと思っています。早速、今年度は台北市で行われるスタートアップイベント「Meet Taipei」との連携に向けて準備を進めています。コロナでできていないこともあるけど力を入れていきたいですね。

SCS事務局
スタートアップエコシステム推進協議会が2020年1月にできていますね。

札幌市経済観光局 阿部氏
実は札幌や北海道は、様々な組織がそれぞれスタートアップの支援をしてきたんです。地方自治体や大学、経済系の団体や民間企業など本当に多岐に渡るたり、中には似たようなことをやっているがそれぞれやっているためスケールしないなど、課題がありました。そこで、連携してみんなでやったほうがスタートアップエコシステムが作れるのではないかと考え、協議会を立ち上げました。これが一番の目的です。

一般財団法人さっぽろ産業振興財団 中本
その中で、内閣府が主導で行っているスタートアップエコシステム推進拠点に選出されれば、私たちが実現したいスタートアップエコシステムが加速できると思ったんです。

SCS事務局
そうして、スタートアップ・エコシステム推進拠点都市に選出されたんですね。

札幌市経済観光局 阿部氏
札幌市がスタートアップに力を入れているということは、全国的にまだ知らない人が多いと思いますが、これに選出されることによって知ってもらえるのが一つ大きなメリットです。
「選出おめでとうございます!」という声や、「一緒に何か取り組みましょう」という話が生まれつつあるんです。
他にも、札幌にはまだまだ少ない投資家の誘致だったり、世界への情報発信、政府のスタートアップ支援の積極的な実施が出来たりなど、札幌市だけでは力が及ばない部分を補うことができます。

SCS事務局
今まで取り組まれてきて大変だったことはなんですか?

札幌市経済観光局 阿部氏
いろんなことがありましたが、大変だとは感じませんでした。新しいことをどんどんやっていくのは楽しいですよね。特に民間企業と協力して、札幌を一緒に盛り上げていくのは本当にやりがいを感じます。
でも…そうですね、あえて言うならば、札幌市役所内部への説明が大変だったかもしれないです。どこへいっても「スタートアップってなに?」から始まるので、まず2時間くらいスタートアップの説明をしたり、これをやる意味が何なのかとか…めちゃくちゃ説明しましたね。

一般財団法人さっぽろ産業振興財団 中本
その説明は何度もしましたね(笑)最初は内部の味方が少なかったですよね、それが一番大変だったかもしれません。

札幌市経済観光局 阿部氏
動き始めた当初はもちろんいろんな方に説明していきましたが、色々と形が出来てきて、数値目標をクリア出来てから、周りの理解が変わっていったように思います。その目標は、札幌のスタートアップ企業の総資金調達額です。資金調達により雇用が増え、お金がまわり札幌の経済に結びついてきたんですね。
それに、スタートアップ・エコシステム推進拠点都市に選ばれたりしたので、理解してくれる人や応援してくれる人が増えてきました。

一般財団法人さっぽろ産業振興財団 中本
最初から「よしやれ!」ではなくて、一生懸命説明して私たちの思いが伝わって「じゃあやってみろ」となったところから始まってます。まだまだ成果を出していかなきゃいけないですね。

SCS事務局
実際に取り組んで来た中で、札幌はどう変わってきましたか?

札幌市経済観光局 阿部氏
北海道を代表する企業である北海道新聞社が、札幌の中心部にSAPPORO Incubation Hub DRIVEというシェアオフィス・コワーキングスペースを作ってくれたのは大きかったですね。新たに何かしようとしている人たちの集まる場になっています。

一般財団法人さっぽろ産業振興財団 中本
東京のスタートアップイベントでブースを出したときに、道外の方から札幌の取り組みについて「知ってるよ!」と声をかけられたんです。少しずつ、認知度も上がっていると思っています。
それに、札幌のとある高校から「アントレプレナーシップ教育をやりたい」という相談を受けました。そういう声を聞いていると、スタートアップエコシステムが少しずつ動き始めている気がしますね。

札幌市経済観光局 阿部氏
役所の中で「スタートアップと何かやりたい」だとか、シェアオフィスやコワーキングスペースをつくってビジネス的に魅力的なまちづくりをしていきたい、と言ってくれるようになりました。別の部署でも応援してくれる人が出てきたのが印象的です。
それに職員たちも、スタートアップに興味があるけど関わり方が分からないから勉強しよう、という雰囲気になっているんです。「俺たちやらないと」と思っている職員が増えてきました。

SCS事務局
理想や目標を実現していく中での課題はなんですか?

札幌市経済観光局 阿部氏
ここ数年で、人材もいる、エコシステムへの動きが出てきた、プレイヤーが集まる場所もできた、というプラス面もあります!でももっと気運を醸成していきたいですね。
それに、市内でもスタートアップをまだ理解してない人もいます。サッポロバレーが終わりを告げてから長い間起業文化が無いに等しかった訳ですから、起業に対して必要以上に怖がっている部分もあると思います。だから、ちゃんとスタートアップエコシステムを作って、チャレンジした結果失敗してもフォローできる環境をつくりたいです。チャレンジする土壌ができていれば、UIJターンも含め、や道外国外から人がきてくれると思うんですよね。そこを作っていきたいです。

SCS事務局
札幌でスタートアップとして起業しようとしている人にメッセージをお願いします。

札幌市経済観光局 阿部氏
札幌は食べ物も美味しいし、住みやすいし、とても良い環境ですよ!いつでも、ウェルカムです!

一般財団法人さっぽろ産業振興財団 中本
東京に行く人もたくさんいますが、それはそれで良いと思っています。でも札幌にも良さがあって、例えば札幌は東京と比べると大きな街ではないのでプレイヤーがぎゅっと集まっているので会いたい人にすぐに会えます。それに、スタートアップエコシステムのど真ん中で起業できるのはとても強みだと思いますね。ぜひ東京から札幌に戻ってきて、得たノウハウを生かして札幌で起業していただきたいです!

札幌市経済観光局 阿部氏
行政も応援し支援します!ぜひうまく行政を使ってください!