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【SCS業界研究】バイオヘルスケア領域は北海道の強み!?

【SCS業界研究】バイオヘルスケア領域は北海道の強み!?

スタートアップ企業の創出と育成に力を入れている札幌市。実は、中でも「バイオヘルスケア領域」に力を入れていることをご存知でしたか?
例えば、補助金。若手研究者の研究シーズの育成から研究者と企業の事業化を目指した共同研究に対する補助金など幅広く研究開発費をサポートしています。他にも、NoMapsやSTARTUP CITY SAPPOROにてバイオヘルスケア領域での起業促進や経営力向上を目的としたセミナーを実施。国内外の展示商談会への出展支援や起業家・研究者向け交流会の実施など、サポートは多岐にわたります
今回は、バイオヘルスケア領域でのスタートアップ創出・育成に力を入れている札幌市役所ものづくり・健康医療産業担当課の三井氏と、ノーステック財団研究開発支援部の伊藤氏、そしてそれらの支援を受けて今まさにスタートアップを立ち上げたばかりの株式会社DeVineファウンダー兼研究顧問の大久保氏をお招きし、お話を伺いました。

そもそもどうして札幌市はバイオヘルスケア産業に注目するんでしょうか?膨大な時間やお金をかけた研究が必要なイメージがあり、大学の研究を利用しないとスタートアップは生まれなさそうですよね。

札幌市 三井氏
札幌市では、数年前から健康医療関連の産業分野の支援に力を入れ始めました。札幌市の産業は、多くが観光や食、サービス業などの第三次産業が多く、製造業などの第二次産業の割合が少ないんですね。そこで、新たな産業の柱として健康医療分野に着目しました。理由としては、世界的にも需要が増えているということと、日本が直面している少子高齢化社会への課題解決にもつながるからです。確かに膨大な時間やお金が研究開発にはかかりますが大きな成長が期待できて社会的にも意義がある。だから、ノーステック財団と協力し、大きな産業の柱へと育てていきたいと考えています。

ノーステック財団 伊藤氏
我々は「研究開発から事業化までの一貫した支援」を活動理念とし、科学技術の振興と技術シーズの事業化支援を通じて北海道産業の振興と活力ある地域経済の発展に取り組んでいます。札幌市が健康医療に注力する背景とも通ずるところがありますが、北海道は、全国より10年早く人口減少に転じていて、生産年齢人口の減少がもたらす需要の減少や産業・地域の担い手不足という重要な課題に直面しています。これらの課題に対して重要なのは、新たな需要の創出や道内企業の生産性向上に向けた取組みを着実に実行し、「北海道の稼ぐ力」の向上に貢献していくこと。その可能性の一つがバイオヘルスケア領域だと考えています。技術シーズは大学で生まれますが、北海道にはたくさんの大学があります。つまり、技術シーズや研究者が多くいると言う意味で、バイオヘルスケア領域は北海道の強みと言っても過言ではありません。

ノーステック財団 伊藤氏

なるほど、バイオヘルスケア領域は、札幌・北海道の強みなんですね。

ノーステック財団 伊藤氏
北海道では農水産物やフィールドなど、資源という意味ではすごく可能性が広がっていますよね。そこがまさに優位性だと思います。株式会社DeVineも、酪農で廃棄されている歯を使った事業を展開しようとしていますが、北海道の優位性をフル活用しています。

札幌市 三井氏
ノーステック財団を中心に、札幌市はもちろん、幅広いネットワークを通じてオール北海道でのサポート体制があるので、バイオヘルスケア領域の研究開発への支援は手厚いと思います。

それでは、そんな札幌市とノーステック財団の支援を受けながら起業された株式会社DeVineの大久保さんにお話を伺いたいと思います。まず、事業内容について教えてください。

株式会社DeVine 大久保氏
一言でいうと、酪農未利用資源である歯を活用した、新たな医療用移植材の開発と実用化です。現在は犬や猫などのペット向けのものを開発しています。
人間の話をします。歯のインプラント治療をご存知ですか?歯を失った箇所に人工の歯根(インプラント)を埋め、歯を補う治療法です。それには、歯を支えられる程度の顎の骨が必要なのですが、歯周病の悪化で顎の骨が溶けてしまい、インプラント治療が出来ない高齢者が多くいます。元々、抜いた歯(虫歯になっていない親知らずなど健康な歯)を砕き医療用移植材にし、減ってしまった顎の骨に移植させると骨が再生することは分かっていました。しかし、できるのは本人の抜いた歯を本人自身に移植するのみで、他人のものを移植することは出来ないんです。技術的には可能で、それができれば多くの人がインプラントが出来るのに、ハードルが高すぎて出来ないことに悔しさを感じていました。そこで、口内トラブルが多い犬や猫から始めようと考え、研究を行いました。

酪農未利用資源である牛の歯を活用されていますが、非常に北海道らしいですよね。

株式会社DeVine 大久保氏
きっかけは、北大の獣医学の先生と知り合いだったこと。牛海綿状脳症(BSE)の影響もあり、頭は廃棄されているんですが、牛の歯は非常に大きく利用価値も高いと考え、目をつけました。実用化のためにはもっと研究重ねなければと思い、ノーステック財団を訪ねました。結果として3年間で1000万円以上の研究費をノーステック財団に支援してもらいました。

ノーステック財団 伊藤氏
北大とノーステック財団が近いということもあり、大久保先生は何度も足を運んでくださいました。

株式会社DeVine 大久保氏
人間への医療分野は、実用までに時間とお金がとにかくかかるんです。例えば、安全性管理のため、開発時や医薬品の承認申請時に必要不可欠なプロセスである、ウイルスクリアランステストをやるには、認定された施設じゃないと実施できません。その施設を借りるのに、500万円〜1000万円かかります。性能試験にも2000万円ほどかかったり…臨床に行き着くまでにたくさんの壁があります。

株式会社DeVine 大久保氏

なるほど。バイオヘルスケア領域では研究開発費をいかに捻出するかが大切なんですね。

株式会社DeVine 大久保氏
それも大事なのですが、それだけじゃないと起業して知ったことがあります。私はかつて「お金が手に入らないことが問題」だと思っていたんですが、どういうお金を手に入れたかの方が会社経営という文脈では非常に大事だと気付きました。起業するまで分かっていなかったのですが、企業が出資を受けることって自社の株を渡すということ。それはつまり条件次第では経営権を渡してしまうリスクにつながるので、重要な知財がある場合、それは慎重にならなきゃいけないですよね。研究者って実はそこらへんが疎くて…バイオヘルスケア領域でのスタートアップは大学の研究者と経営人材がタックを組まないとなかなか生まれませんが、研究者と起業に大きな隔たりがあると感じます。大学の教員は普通の会社員とは全く違う文化なので、例えば自分の研究してきたものを手放すのは嫌がる方も多いと思いますが、スタートアップの一つのゴールはM&Aだったりしますよね。他にも、大学の教員は論文を書くことに力を入れていますが、その研究成果は特許を申請したほうが会社経営的には良いかもしれない。しかし、特許申請を行うということは、教員自身の成果をすぐに論文にまとめ、学会などで発表ができないということに繋がります。そういう事情を考慮したうえで、研究開発側のことをよく理解したインキュベーターがほしかったです。こういった相談は全てノーステック財団の伊藤さんにしていて、株式会社DeVineの代表取締役社長である依田とは、伊藤さんがきっかけとなって出会うことが出来ました。

今後の抱負を教えてください。

株式会社DeVine 大久保氏
歯には可能性が非常に眠っています。酪農未利用資源を活用した犬猫用医療移植材をスタートに開発を続けていきます。
個人的には、研究→事業→研究…の資金サイクルを作って、サステナブルな研究体制と連続的な事業化のシステム構築を、北海道大学を基軸として実施していけたらと思います。そして、それらの全体統括を行うような仕事に関われたらと強く思っています。私がそのきっかけとなり、北大ファンドや次の起業家がたくさん生まれるようにしたいですね。そういった意味で、札幌・北海道におけるバイオヘルスケア領域の成長を担うつもりで頑張っています。

研究者と経営者の相乗効果、想像するだけでワクワクしますね!例えば、経営者人材がバイオヘルスケア領域で起業したい場合、どこに相談に行くと良いのでしょうか?

ノーステック財団 伊藤氏
まずはノーステック財団に相談してください!長年研究支援していますし、支援先とコミュニケーションをとっているのでバイオヘルスケア領域のネットワークを持っています。一緒に研究者を訪問することも可能ですし、とにかく相談に来ていただければと思います。

札幌市 三井氏
札幌市も、健康医療関連分野のビジネスについて、研究開発から販路拡大に至るまで手厚いサポートメニューを用意しています。ぜひ、バイオヘルスケア領域の研究を実用化したい方や新たにこの分野のビジネスを始めたい方に活用してもらいたいですね。

札幌市 三井氏