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【SCS業界研究】北海道は宇宙ビジネスの適地。スタートアップにはフルサポート体制を提供

第三回目の業界研究テーマは、「宇宙」!

宇宙は自分の生活とはかけ離れた存在…と思っている方も多いのではないでしょうか。確かに、普段目にする星座は何光年、何億光年も離れているので、遠いし分からないことだらけの世界です。しかし、その宇宙に可能性を感じ、世界中で宇宙ビジネスのスタートアップが産まれていることをご存知ですか?

ロケットをつくる技術は軍事技術に転用できるために、かつては国のものでした。それが、世界的に見てもどんどん民間に開かれたものになっています。アメリカ合衆国のSpaceX(正式名称はSpace Exploration Technologies Corp.)を始め、多くの企業が宇宙ビジネスに注目しています。

そんな宇宙ビジネスですが、実は北海道は適地であり、最先端を行く地でもあります!今回は、北海道に宇宙ビジネスを根付かせようと邁進されている北海道経済部産業振興局産業振興課宇宙航空産業担当の丸山理さんにお話を伺いました。

ーーどうして北海道として宇宙ビジネスに取り組んでいるんですか?

やはり、北海道の地理的優位性に加えて、成長分野であることと、ビジネスの広がりを強く感じていることが背景にあります。

全世界で40兆円程度の産業と言われているのが、2040年には110兆円産業になると言われています。国内宇宙産業の規模に比べて、あまりにも大きい数字で現実味がないかもしれませんね。

日本国内も、現状の市場規模はロケットや人工衛星をつくる産業で4000億円弱、人工衛星のデータを使ってビジネスをする事業者の方々で8000億円、だいたい1.2兆円となっていますが、我が国の「宇宙産業ビジョン2030」や「宇宙基本計画」においては、2030年代早期に市場規模を倍増することを目指して、いま、政府を挙げて取り組みを進めています。

北海道が一生懸命取り組んでいるそのきっかけとは、やはり、2019年にインターステラテクノロジズ(以下、IST)がロケットの打ち上げを成功させたことが大きいです。

▲国内初、民間企業単独で宇宙空間まで飛翔した、ISTの『宇宙品質にシフト MOMO3号機』

ロケットは輸送業!陸上で例えるなら、MOMOは軽トラックみたいなもの!?

ーーISTの成功が大きいんですね!

ロケットは打ち上げて終わりではなくて、荷物を運んで、運んだ荷物が宇宙で何かをすることによって価値を生み出すというビジネスです。つまり、輸送業なんですね。

国の大きいH3ロケットとか、よくニュースに出るSpaceXのファルコンロケットが「大型バス」や「貨物列車」だとすれば、ISTのMOMOは小型軽トラック(同社は「スーパーカブ」とも)に近いと考えています。小さな人工衛星の需要が急激に増加していることを背景に、小型・安価・高頻度で自由度の高い打ち上げが可能な輸送サービスを目指すビジネスです。

また、ロケットは多くの部品や機器から作られていたり、人工衛星を搭載するためのインターフェースの調整など関連する業務が必要となったりするため、たくさんの企業が関わります。人工衛星を含めた宇宙機器については、宇宙関連分野の中でも、特に産業集積などいろいろなビジネスの広がりが見えるということにも期待をしています。

日本の中で北海道は非常に広い地域ですし、一次産業を中心に衛星データの利用に取り組んでいます。担い手不足の中で省力化や、データを活用して作業の効率化を図るという視点からも、我々としては非常に期待しているところです。

ーー一次産業と衛星は相性が良いですよね。道庁内では、一次産業の部署と具体的な推進活動などは話されているんでしょうか?

北海道庁が事務局を担う産学官連携による『宇宙関連ビジネス創出連携会議』を中心に取り組んでいます。その中で、関係部局も参加して、農業分野のプロジェクトですとか、水産業や林業でどういうことができるかなどを話し合っています。

これまでは農業をテーマとした取り組みが多い印象です。ご存知のように、トラクターの自動運転をはじめ、人工衛星のデータを利用して、その植物の状態や生育の度合いを測って、適切なタイミングで特定の作業を行う効率化や、人にしかできないところ以外を機械化・省力化していくということを考えています。

ーー北海道だからこそ、宇宙をどんどん活用していこうっていう流れがあったのですね。

そうですね。人の手と目で処理できる範囲の広さであれば人工衛星を使うよりこれまでどおり人力の方が良いとの考え方もありますが、北海道というのは土地が広大で農業規模も大きく、衛星データを活用した効率化・省力化に非常に適しています。もう少し世界に目を向けると、中国やアメリカ大陸も含めてより広大な土地で成り立つビジネスにもなり得えますよね。

宇宙産業を広める鍵は「ユースケースの掘り起こし」

ーー北海道として北海道宇宙関連ビジネス創出連携会議以外に、どんなことに取り組んでいるのですか?

施策としては、航空宇宙関連の試験研究拠点や企業の誘致に加えて、ロケット開発や人工衛星開発のような宇宙機器関連分野への参入支援や、衛星データを利用するビジネスなど、宇宙利用産業のプレイヤーを増やす、裾野を広げることを通じて宇宙機器の需要を創出することを目指しています。

研究機関発のビジネスシーズは我々が取り組んでいる北海道宇宙関連ビジネス創出連携会議等を通じてある程度はフォローできると思いますが、具体的なニーズやユースケースを提示できていた方が、新たなプレイヤーの参入を含めてビジネスとして加速しやすいと考えています。

宇宙産業は、実証実験・研究に一定の期間とコストが必要となるため、ゼロからスタートするベンチャーにはハードルが高い面もありますので、国の研究開発予算や実証プログラムを活用していただきつつ、研究段階からビジネスへの段階へ円滑に移行できるように、ニーズをどれだけ増やせるかを今意識しています。例えば衛星データを使いたい農家が1戸しかないとビジネスにはなりませんが、そのような農家が大勢いたら状況は変わりますよね。「それだけのニーズがあればデータをこれくらい購入して、この金額でソリューション提供できますよ」となるかもしれないし、多くのニーズがすでに見えていれば人工衛星を打ち上げてデータやソリューションを提供するビジネスが成立するなと判断できるかもしれません。だからこそ、具体的なニーズとユースケースの掘り起こしが鍵だと思いますし、そういった世界を思い描いています。

ーー一般企業こそ、宇宙利用をしっかりと考えていくべきとお考えなんですね。

ええ、人工衛星を使って取得したデータをどんな風に役に立てられるかなど、使いこなす側の育成も必要だと考えます。そうしなければ、研究や実証で結果がでても、ユーザー不在で結局使われなくなってしまった、ということが起きてしまいます。

どちらかというとサイエンスからスタートした宇宙開発が、少しずつビジネスに近づいて来ていますよね。「いや実はこういうことで困っていて、もしかして人工衛星ならこういうことができないんですか」とか、「こういうデータ取得できないんですか」など、自分でニーズというかアイディアをどんどん出していけるような、そしてそれがビジネスになりそうだ、という気づく事例をたくさん作っていければと考えています。

ーー今後、連携会議はどのように変化していきますか?

今は北海道宇宙関連ビジネス創出連携会議の中で、先駆的な事例を発表してそれに対して知識のある方が質問やコメントをする場面が多いのですが、今後は、市町村などの行政需要も含めて、どのような課題・ニーズがあるかの掘り起こしや、事例発表だけで終わらない広がりを生み出せるような場を作っていきたいなと思っています。

北海道に宇宙関連企業の集積地帯ができれば、更に面白くなる

ーー北海道としては、大樹町のスペースポートを中心に宇宙関連企業を集積させたいとお考えですか?

全国から宇宙に関連する企業が集まってきてくれれば理想的です。ロケットやスペースプレーンを手掛けるスタートアップがきて、人工衛星を軌道に運びたいスタートアップがきて、そのデータを使ってソリューションを提供したいスタートアップがきて…といったムーブメントができればいいですよね。

人工衛星を打ち上げて自らデータを取得するのではなくても、フリーデータを徹底的に活用するビジネスモデルもありだと思います。既存のビジネスモデルや固定観念にとらわれず、ロケットに関する技術が不足しているとか、人工衛星に関する知識を持ちあわせていないからとかではなくて、実はフリーデータでこんなことまでできますという新たな発見もあるかなと個人的には思っています。

十勝は農業も漁業も盛んなところですので、実証データを取るとか、実証のフィールドとしても相応しい場所だと思います。

ーー広くてスケールの大きな十勝はまさに宇宙産業の適地と言えるんですね。

現下の状況で、リモートでの仕事に理解が進んできていますので、ビジネスをするために「東京に居なければ」という発想もある一方で、十勝に居ても仕事ができる環境になりつつあります。例えばスペースポートがある大樹町は土地も広大で食べ物も美味しいですし、人混みもそれほどありません。宇宙産業に直接携わる方だけでなく、興味のある方も宇宙産業の適地で働くことがとても良い刺激になると思いますね。

ーー北海道や十勝に宇宙関連企業が集積したら、すごく盛り上がりますね!

宇宙関連企業も遠隔でやりとりするより、互いに現場にいた方がコミュニケーションがを密に取れると思いますので、本社移転のハードルは高くても、サテライトオフィス的なものから試験的に取り組んでいただければと思います。数多くの企業のサテライトオフィスが十勝管内に集まれば、企業同士の交流が生まれ、宇宙関連コミュニティができて、更に新しい予期せぬ発想も期待できます。

2021年4月に、大樹町で整備が進められている北海道スペースポートの運営を担うSPACE COTAN株式会社が始動しましたので、ここからが宇宙関連企業の集積に向けての本格的なスタートなのだと思っています。

▲北海道スペースポート(HOSPO)の未来図イメージ

ーー最後に宇宙産業でスタートアップの起業を考えている方に、後押しをするようなメッセージをいただきたいです。

学生の方に限らず、既に働かれている方の中にも、宇宙に興味があって、有望な産業分野だというのはなんとなく分かりつつ、一歩を踏み出せていない方が多くいらっしゃると思います。

北海道大樹町に、新しくスペースポート運営会社SPACE COTAN株式会社もできましたし、優れた多種多様な研究機関の方々も北海道にはいらっしゃいます。この広大なフィールドがまさに宇宙ビジネスの適地だと考えています。

現段階では、先に述べた連携会議のメンバーを中心とした取り組みとなりますが、フルサポートできる体制を整えていますので、ぜひ積極的にチャレンジしていただければと思います。

ライター:SCS事務局

岡山ひろみ

札幌出身、大樹町在住の猫を愛するWEBライター。