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“With/Afterコロナ時代のスタートアップ成長戦略”

“With/Afterコロナ時代のスタートアップ成長戦略”

5月19日に“With/Afterコロナ時代のスタートアップ成長戦略”と題しウェビナーを実施しました。VC(ベンチャーキャピタル)、アクセラレーター、シンクタンクといったスタートアップを支援する立場から、コロナ禍でのスタートアップへの影響や現状をお話いただき、当日は北海道をはじめ全国から100名以上の方々にご覧いただきました。

視聴者から大好評でしたので、今回はウェビナーの内容をレポートします!

プロフィール

株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 研究員 井村 圭 氏:北海道音更町出身、帯広柏葉高校を経て、早稲田大学卒業。在学時は国会議員事務所、スタートアップにてインターンを経験。2007年から外資コンサルファームにてDXコンサルティングに従事。その後、2015年からイノベーションファームにて主に経済産業省、自治体(帯広市など)のスタートアップ関連事業に従事。2016年から1年間、経済産業省に出向し、地域経済分析システム(REASAS)の開発に携わる。2018年、株式会社会社日本総合研究所に入社し、NEDO(+NoMaps)、内閣府、SMBCのスタートアップ関連事業に従事。現在は主にスタートアップ、スマートシティ 、MaaS分野を専門に担当。

株式会社KVP 代表取締役社長/パートナー 長野 泰和 氏:早稲田大学卒業。KLab株式会社入社後、BtoBソリューション営業を経て、社長室にて新規事業開発のグループリーダーに就任。その後、2011年12月に設立したKLab Venturesの立ち上げに携わり、取締役に就任。2012年4月に同社の代表取締役社長に就任。18社のベンチャーへの投資を実行する。2015年10月にはシードに特化したベンチャーキャピタルであるKVPを設立、同社代表取締役社長に就任。KVPから4年間で70社程度の投資実行。代表的な投資事例は、ソーシャルワイヤー(3929)、Tokopedia、CBcloud、ノイン、ソエル、BloomeeLIFE、トイサブなど。

株式会社デジタルガレージ オープンネットワークラボ推進部 原 大介 氏:2005年慶応大学卒業、公認会計士試験合格。2007年より新日本有限責任監査法人勤務。金融業や製造業等の様々な業務の監査に従事。2012年より2年間、アメリカ・シリコンバレーに出向、現地でアメリカ企業の上場を支援(3社)。2015年より、不動産ビッグデータを利用したコンサルティング会社・ゴミを原料としたケミカルリサイクルを営む会社でCFO。エクイティのみならず、デッドや助成金等の様々な資金調達手法に精通。現在までの累積調達額は90億円超。2019年11月よりデジタルガレージに参画。




1.コロナによるマーケットへの影響

まず、このイベントの冒頭では、今まで大企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)や、大企業とスタートアップとのオープンイノベーションなどのコンサルティングに携わってきた、北海道音更町出身の井村さんからコロナによるマーケットへの影響をお聞きしました。

井村:このコロナの流行によって、スタートアップにも大きな影響があるのではという不安が、起業を目指す方々や、スタートアップ業界に関わられている方には多かれ少なかれあると思います。事実、資金調達額も前年比割れの数値が出ていたり、スタートアップへの投資や協業を進めてきた大手企業がその活動を減らしたりするといったニュースが流れていたりと、このコロナの状況はスタートアップにとって、とてもネガティブな状況にも見えます。

ただ、スタートアップにとって大きな影響がある大企業の内部の動きを見てみると、ゴールデンウィーク前は仕事ができない、既存事業の先行きが見えないなどパニック状態ではあったものの、現在はWEB会議システムを導入してテレワーク化も進み、コロナによる社会の変化を見据えて新たな事業を検討し始めるなど、ポジティブな動きも中には出てきています。

過去を振り返ると、経済が大きく停滞したリーマンショック時に出現したスタートアップは、遊休資産を有効活用するシェアリングエコノミーや、企業活動の中で人的工数をかけていた業務のオートメーション、アウトソーシングなどの分野で、それまでの前提を覆すようなイノベーティブな企業がいくつも生まれてきました。今回のコロナショックからもそのような企業が生まれてくる可能性は大きいと個人的には考えています。

コロナショックとリーマンショックで異なると感じるのは、経済だけでなく、社会自体がその前後で大きく変わる可能性を秘めていることです。この変化によって、ビジネスの前提も大きく変わってくることが想定されます。このような社会やビジネスの変化に対して、新たな価値、新たな事業を創出することが、今後企業の大小に問わず求められてくることだと思います。その中で、新たなイノベーションを生み出すスタートアップに対しては、多くの企業や投資家、そして社会全体から、今までよりもますます大きな期待を持たれるものと思います。



2.パネルディスカッション、Q&A

マーケット状況の説明の後、井村さんの司会進行のもと、長野さんと、原さんにWith/Afterコロナ時代のスタートアップの成長戦略や資金調達、オープンイノベーション市場の変化などについて、パネルディスカッション形式でお話いただきました。

Q1、Beforeコロナ時のスタートアップ界隈の動向について

長野:8年前にVCという職業に就きましたが、その頃と比べてスタートアップも様変わりしています。当時はスマホが出たばかりで、既存のサービスをスマホに置き換えるサービスが多かったのですが、最近はデジタルトランスフォーメーション(DX)の潮流の中で、全ての経済活動をデジタル化する動きになっています。年々スタートアップの数も増え、今では毎月60〜70社のスタートアップに会っています。

原:僕はアクセラレーターとしての立場から言いますと、東京のOpen Network Lab(通称Onlab)では、先日20回目を終えたばかりですが、年々スタートアップの応募数も質も上がっています。Onlabでは北海道も含め計5プログラム生まれ、アクセラレータープログラムも勢いを増していると言えます。


Q2、海外と比べて日本のスタートアップ業界の特徴は?

長野:アメリカと東南アジアでの投資経験で言うと、アメリカは、投資家も起業家も桁違いに多く、やはりコンペティティブです。東南アジアでは、アメリカや日本で流行ったもののタイムマシンモデルという印象ですね。日本のスタートアップの特徴は、いきなり海外へ進出するのではなく、まずは日本のマーケットでプロダクト・マーケット・フィットさせ、売上を立てていく会社が多いのが特徴と言えます。

原:デットファイナンスの観点からアメリカと比べると、アメリカの場合はスタートアップがデットで調達できる要素がほぼありません。IPOまでは、エクイティファイナンスで資金調達を行うのが一般的です。逆に日本では、金融公庫など創業者向けの融資が受けやすく、金利が安いのが特徴です。アメリカにいる知人に話すと驚かれますね。

長野:確かに日本の起業環境はとても恵まれていますね。VCも増えていますし。日本には可能性しかないですね。


Q3、コロナによってスタートアップの状況はどう変化したか?

長野:コロナの影響でダメージを受けたという人が、僕の周りにほぼいないです。実際、コロナによってDXは加速していますので、弊社の投資先も追い風と捉えているところが多いです。ただし、資金調達環境は激変している印象があります。事業会社が投資しなくなってきていますので。ただ僕としては、DXが進んでいるこの状況はチャンスだと思っていますので、積極的に投資していきたいと考えています。

原:僕がファイナンスの支援をしているスタートアップでは、資金調達で追い風になっているところと、調達に失敗しているところがあります。失敗したスタートアップは、エクイティで資金調達を予定していたのですが、状況が変わりデットに切り替えたところ、うまく進まなかったところが多いです。その理由は、エクイティとデットの違いをあまり理解せずに資金調達しようとしていたからです。エクイティサイドは、投資額が10倍や100倍になることを期待して出資していますが、デットは基本的にはお金がそのまま返ってくることを想定しています。スタートアップ側は、その差を理解せずに事業計画書を作り、失敗しているケースが多いと言えます。

井村:長野さんがおっしゃられているように、DXの加速は企業においても急速に進展しているように感じます。今まで複数年で検討されてきたことが、数か月で実現しています。この分野に関しては企業側もこれから投資を続けていくと思いますので、BtoBに対するデジタルサービス、特にSaaS型のサービスを提供するスタートアップに関しては、大きな商機だとも感じます。


Q4、地方のスタートアップとの接触方法に変化はあるか?

長野:これまでは、東京やシリコンバレーに起業家が集まりオフラインの場で起業家同士、切磋琢磨していた印象です。その点で言うと、これまで地方はディスアドバンテージだったかと思います。ですが、今度弊社が投資する会社は、オンラインのみで全て完結しました。投資する際、やはり直接会いたいと思うこともあるのですが、オンラインで99%は人となりもわかります。そういう意味では、東京も地方も変わらなくなってくると思いますね。そもそも、投資を判断するのは、創業者がどういう方で、どういうビジネスモデルかということがファクターですので。

原:弊社が運営しているアクセラレータープログラムOnlabでは、これまで3ヶ月間のプログラム期間中、東京に滞在していただきオフラインで対面していましたが、今後フルオンラインになるので、地方にいる方々も参加しやすくなると思います。ただし、デットでの資金調達に関して言いますと、フルオンラインで完結できるという状況にはまだ至っていません。


Q5、今後求められる起業家像は?

長野:オフラインを絡むものか、デジタルで完結するものかという点が明暗を分ける気がします。弊社が投資しているオンラインヨガの会社も投資した当時はニッチだなと思いましたが、今は急成長しています。今後もデジタル × ◯◯という分野には、どんどん投資していきたいです。

原:この状況だからこそチャンスだと思います。僕が今ファイナンスを支援している移動型の授乳機をリースしている会社が、最近好調です。この移動型授乳室は、赤ちゃんとお母さんだけが使えるので3密を防げます。コロナによって新たな課題が増えてきていますので、活躍できる要素が増えてきていると前向きに捉えてほしいです。


Q6Afterコロナで起業した場合、資金調達状況は変わると思いますか?

長野:資金調達に関しては、楽観的なことは言えないと思います。これまで資金調達を担っていたのは、VC、事業会社が半々でしたが、事業会社の投資が縮小傾向ですので。ただ、VCからの投資は減っていないので、VCが投資してくれるのはどのような事業かを考えるのも一つのポイントと言えます。

原:Afterコロナでも、起業直後に使えるデットの種類はこれまでと変わらないと思います。エクイティの状況が厳しくなってくる以上、デットの重要性は増してくるので、うまく使うことが重要です。

井村:資金調達ではありませんが、個人的には、コロナ後の新たな事業の柱を生み出さねばという大企業側の危機意識から、新規事業投資は長期的に見て大きくは減らないと思っています。スタートアップ側にとって資金調達は厳しくなるかもしれませんが、アライアンスなどという形で大企業との新たな関係性は生まれてくるのではないでしょうか。


Q7、バリュエーションの算定はどうやって行っていますか?

長野:東京と地方のスタートアップで違う点は、資本政策です。地方では、ひっくり返りそうになるような資本政策を組んでいる会社も多いので、十分気をつけてほしいと思います。次の資金調達ができなくなる可能性もあります。

一般的に上場に至るまで大きな資金調達を5〜6回することになりますが、1回のファイナンスにつきダイリューションは10〜15%に抑えなければいけません。(そうしないと上場時に創業者のシェアが著しく低くなることになります。)

バリュエーションの判定は本当に難しいのですが、正直相対評価です。バリュエーションは、サービスができる前だと1〜2億円、サービスができていて2〜5億円、サービスができてユーザーも売上も付いていて5億円以上、例えばSaasで月次の売り上げが1000万円あったら10億円にチャレンジという感じです。10億円以上は公式があるので、算出しやすいのですが。

原:スタートアップ側に立って資金調達のアドバイスをしていますが、正直一番揉めるのはバリュエーションですね。一番プロダクトのこともわかっているので起業家側がバリュエーションを高くつけがちなのはわかりますが、バリュエーションは第三者がつけるものです。ルールに当てはめて、柔軟に対応していく方が重要。資金調達に夢中になって、本業がおろそかになるのは本当に勿体無いので、不本意かもしれないですが小さい額でクローズして本業に注力するのも一つの手です。


Q8、地方スタートアップがVCと繋がるためのポイントは?

長野:これまでなら都内でVC主催のイベントがあったのでそこに行けば投資家に出会えるというのが定石でした。今は、どこのVCでもオンラインで壁打ちを行っていますので、HPやTwitterをチェックして参加するのがいいと思います。

井村:今は国や全国の地方自治体、地方経済産業局でスタートアップ関連のイベントが多く開催されており、そういう場にVCの方やアクセラレーターの方とも参加しているので、こういう場を活用して繋がりを作るのも一つの手かと思います。


Q9、アクセラレーターに応募する際に注意することは?

原:数多くのアクセラレータープログラムが存在しますが、1つ目は参加して出資してもらえるかどうか、2つ目は過去の卒業生を見ることがポイントかと思います。


Q10、最後にスタートアップの方々へメッセージを!

原:このウェビナーに向けて北海道内の銀行にデッドの状況を聞いたのですが、北海道は地域一丸となって地元の事業を支えていこうという状況にあると思います。ただ、いきなり銀行に来ていただいても対応しきれないと思うので、まずはSCS事務局へ相談していただければと思います。

(※適切な相談先をご案内します!) 

長野:2008年のリーマンショックの時に生まれた会社が現在大きく花開いているように、この状況によって生まれる企業が大きく羽ばたくことも十分あり得ますので、今はチャンスだと思います。スタートアップが危険というイメージを持っている方もいるかもしれませんが、ちゃんとビジネスを行えば全く怖くないので、ぜひチャレンジしてほしいです!

井村:これまで大企業のDXや、都市のデジタル化を目指すスマートシティ関連のコンサルティングに従事してきましたが、今までなかなか実現しにくかった状況が、このコロナ禍でデジタルに対する期待が一気に高まったことで、大きく環境が変わりつつあります。スタートアップの方々には新しい価値を生み出して頂き、一緒に新しい社会を作っていけたらと思います。是非とも盛り上げていきましょう!


SCSウェビナーシリーズは今後も随時開催してまいります。最新情報は、こちらのHPまたはFacebookTwitterよりご確認ください!