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株式投資型クラウドファンディングってなんですか?

スタートアップにおける新たな資金調達の手段として注目され始めている『株式投資型クラウドファンディング(以下:株式投資型CF)』。日本では、支援のリターンとしてモノやサービスが返ってくる購入型クラウドファンディング(以下:購入型CF)は数年前から話題になっていますが、リターンで株式を手にすることができる株式投資型CFには、馴染みがない方が多いのではないでしょうか?

今回は、大和証券グループから資金調達をし、この夏新たに株式投資型CFプラットフォーム『イークラウド』をスタートさせる、イークラウド株式会社代表取締役波多江直彦さんにお話を伺いました!

−購入型CFは支援者がお金を出す代わりに実行者がモノやサービスを渡すのが基本です。株式投資型CFはリターンに株式がもらえますが、それ以外に違う点はありますか?

株式投資型クラウドファンディングの仕組み

購入型CFは基本的にプロジェクト単位で関わりますが、株式投資型CFは会社単位で関わるので、中長期的な目線で起業家や企業を応援できます。

例えば、非上場のスタートアップの投資家になったとします。投資家が投資資本を回収するのは、IPO(証券取引所に上場し、誰でも株取引ができるようにすること)やM&A(企業の合併や買収)のタイミングなので、株式投資型CFのリターンを得られるのも、そのタイミングです。そこまでにかかる時間は5年〜10年。投資をしても、そのくらいの年数は、経済的な利益を得られないんです。

つまり、5年〜10年間、ずっとその会社に株主として関わります。スタートアップ(CFと通して投資してもらう)側としては、年に1回株主総会を実施する他に投資家に対して事業報告を定期的に行います。なので、中長期に渡って起業家や企業とコミュニケーションがとれ、応援することが出来るんです。

ライター調べ



−購入型CFは商品のテストマーケティングに使われたり、ファンを作るために使われたりすることが増えてきたのですが、株式投資型CFもそんな目的で使われることってあるんですか?

主目的は、あくまで資金調達ですね!その次にファンマーケティングという要素も強いです。
イギリスのBrewDogというクラフトビールの企業があるのですが、とても分かりやすい事例だと思います。

BrewDogの株主は11万人以上で、例えばレストランの出店先を株主に相談したり、新しいパッケージの感想を聞いたり…本来であれば完成した商品を手に取るだけでしたが、完成までの過程を一緒に作り上げていく特別感を体験できます。もともと好きなブランドだけど、自分が関わった商品が世に出たら、思い入れが強くなり、更にファンになっていく…普通に金融機関から融資を受けるだけの資金調達では成し得ないことです。より多くの人にファンになってもらいながら資金を調達する、ファンマーケティングの側面は非常に優秀な手段と言えます。


−日本にある株式投資型CF6サービスの平均調達金額が3500万円と伺いました。私がイメージしていたスタートアップの資金調達よりも、かなり低そうです…エンジェル投資家やVCじゃダメなんでしょうか?

会社のステップによって、調達先や金額って違うんです。よくニュースになるような「数十億円調達!」レベルは、シリーズBといったIPOやM&Aが見えてきたステップです。その額はVCが中心となって投資しているケースがほとんどです。

逆に、シード・アーリー期ではエンジェル投資家と言われる人たちが数百万円くらいを投資するのが多いです。株式投資型CFが最もハマるのは、このシード・アーリー期だと思います。

もちろん、株式投資型CFだけで資金を賄わなくても良いんです。エンジェル投資家やVCも組み合わせて総合的に資金調達し、IPOやM&Aなどのイグジットを目指していくと良いと思いますね。



−なるほど。シード期のスタートアップにとって、3500万円はかなり大きな額なのですね!

十分だと思います。それに3500万円はあくまでも現在の日本の株式投資型CFの平均調達金額。法で定められているのは「1億円以下」なので、可能性としては十分にあると思います。

株を渡すのは慎重に!と聞いていたのですが、多くの人に出資してもらうと、経営権を持たれるので厄介なのではないでしょうか?

経営権を奪われる心配はありません。株式投資型CFは、金融商品取引法で様々な制限が定められています。スタートアップ企業が資金調達できる金額は1年間に1億円未満、一個人投資家が1社に対して投資できる金額は、1年間に50万円以下。時価総額5億円の会社でに50万円出資したとすると、出資比率は0.1%程度となり、経営関与に関しては問題ないと言えます。

※スタートアップにおける通常の資金調達に上限はなく、10億円以上を調達するケースもあります。株式投資型CFにおける資金調達に上限が設けられています。

−なるほど、それは安心ですね!話を聞いていると、デメリットが見当たりません…!

デメリットというより、リスクはあります。1つ目は、会社にとって好ましくない投資家になるリスクです。会ったことが無い個人投資家に出資してもらうため、個人投資家の本人確認や属性の確認はプラットフォーム側として厳重に確認しています。2つ目は、多くの株主を抱えることによる『事務負担の増加』するリスクです。例としては200人の株主がいることになりますので株主総会を開催するのは大きな負担になってしまいます。イークラウドではオンラインで開催する仕組みを提供することで運営コストを減らしています。3つ目は、『株主間契約』が未締結になりやすいリスクです。株主間契約が未締結だと、M&Aが発生した場合に少数株主が反対し全株式を買収できなくなる
リスクがあります。イークラウドでは株主間契約を電子契約で締結する仕組みを提供することで、リスクを減らしています。

プラットフォームによってこれらのリスクに対するアプローチ方法やサポート範囲は異なりますので事前によく確認してください。

−株式投資型CF業界が拡大することによって、日本のスタートアップってどう変わっていくと思いますか?

日本はスタートアップに年間約4,000億円しか投資が集まっていません。アメリカ合衆国では約14兆円の資金が集まっています。

日本のスタートアップへの投資に限定すると、個人投資家がスタートアップに投資できる機会は限定的なんですよね。いま、日本の個人が持っている金融資産は約1,800兆円と言われていて、その1%でもスタートアップ業界に還流できれば、日本のスタートアップは世界的な規模で挑戦できることになる。株式投資型CFにはそれだけの可能性があると考えています。



−北海道や地方のスタートアップへの影響は?地方は特に、投資家がいないのでスタートアップが急成長しないという側面があるんじゃないか?と個人的に思っています。

今までは、ピッチイベントに登壇して、VCやエンジェル投資家と会って、投資してもらって…というルートばかりでした。しかし、株式投資型CFはインターネットさえあればアクセスできますから、より多くの人に見てもらえる機会が増えると思います。それはチャンスですよね。更に、見てくれる人の中には北海道出身の個人投資家もいるかもしれません。株式投資型CFという新たな資金調達の手段が生まれたことにより、北海道をはじめとした、地方発スタートアップはよりチャンスが増えたと言っても過言ではないと考えます。



いかがでしたか?購入型CFはリターンで返すモノがないと難しかったり、リターンの期限が決まっていたりするので、シード・アーリー期のスタートアップは使いにくい一面がありますが、株式投資型CFは資金調達に特化しているので非常に可能性を感じました!例えばニッチで理解してもらいにくい事業でも、ファンを獲得して資金調達につながるかもしれませんね。
購入型CFとは違って、5年〜10年の長い付き合いになっていくことを考えると、プラットフォームを選ぶ基準は購入型CFと違ってきそうです。メリット、デメリットをよく理解した上で慎重に行ってくださいね。
今後、株式投資型CFが更に注目され、スタートアップ業界が大きく成長していくことが楽しみです。
資金調達で困ったときは、STATUP CITY SAPPORO事務局にご相談ください!




波多江直彦
イークラウド株式会社 代表取締役
慶應法学部卒。新卒サイバーエージェント。子会社役員等を経て、投資担当。その後XTech Venturesにてパートナーとして、VR・SaaS・モビリティ・HRTech・シェアエコ・サブスク等への投資。2018年7月にイークラウド株式会社を創業、代表取締役に就任。

事業内容
イークラウド株式会社では、金融・IT・VC(ベンチャーキャピタル)で培ってきた経験・ノウハウを融合し、株式投資型クラウドファンディングプラットフォーム「イークラウド」を提供します。このプラットフォームを通じて、これまで限定的だったベンチャー投資に関する情報と機会を一般投資家へ提供し、起業家へは銀行・VC・エンジェルなど以外の新たな資金調達の手段を提供します。https://ecrowd.co.jp/company